軍事攻撃されたら原発はどうなるか

―「国内外で戦争ができる国」づくりとフクシマの行方-

「核の時代は、あらゆるものを変えてしまったが、私たちの考え方だけは昔のままだ。ここに問題の根源がある」
(アルバート・.アインシュタイン)

   

 日本国憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書かれているが、「北朝鮮や中国の『公正と信義』に信頼などできるのか」。「隣国に侮られ、尖閣・竹島と、領土を奪われるだけでないか」。「米軍とともに戦争ができる国に変えたほうが、結果的に日本の権益も平和も守れるのではないか」という意見の人が増えている。 本章では、2011年3月11日以降に福島第一原発で何が起こったのかをまとめたい。そのうえでこの事態を、現在の政権党が進めている「国内外で戦争ができる国」づくりと関連付けて考えてみる。そして福島の核惨事を破局に向かって暴走させないためには何が必要か、平和を創出していく別の道はないのかを考えたい。

     

1. 福島第一原発で何がおこったか 

「宇宙の火」としての核エネルギー

 チェルノブイリの核惨事は1986年4月23日に起こったが、直後の段階で、今は亡き高木仁三郎さん(原子力資料情報室)は、次のように書いておられた。
 「核技術というのは、いわば天上の技術を地上において手にしたに等しい。・・・核反応という、天体においてのみ存在し、地上の自然の中には実質上存在しなかった自然現象を、地上で利用することの意味は・・・深刻である。あらゆる生命にとって、放射線は、それにたいしてまったく防御の備えのない脅威であり、放射線は地上の生命の営みの原理を撹乱する異物である。私たちの地上の世界は、生物界も含めて基本的に化学物質によって構成され・・・この循環は、基本的に化学物質の結合と分解といった化学過程の範囲で成り立っている。・・・核文明は、そのように破滅の一瞬を、いつも時限爆弾のように、その胎内に宿しながら、存在している。この危機は・・・これまでのものとまったく異質のものではないだろうか。そして今、その時限装置がカチカチと時を刻む音が、いよいよ大きく、私たちの耳に入ってこないだろうか」と。1)
 高木さんが力説されたように、原子核内部の核反応(核融合・核分裂・放射性崩壊)こそが、「天の火」とも呼ぶべき宇宙の本来的なエネルギー源であった。
 36億年ほど前に、地球という惑星において、有機的な化学反応の世界を作りだすための第一歩が印された。地球の深海の底で原始的な「イノチ」が誕生し、これに伴いイノチの移し替えが行われる「地球生命圏」が生まれ、化学反応にもとづく「地上の火」が生まれたのだ。
 「化学反応の火」と「宇宙の火」とは根本的に異なること、「宇宙の火」のばあい、細胞内の遺伝子媒体(DNA)を切断し、未来世代に影響を与えるだけでなく、いったん着火すると数万年たっても消えないことを、ヒロシマ以降の核惨事が私たちに教えてきた。

原子炉(原発)とは「ゆっくりと爆発」する原爆

 原子炉(その管理体としての原発)というのは何であり、原子爆弾(原爆)とは何が異なるのか。核物質(ウラニウム)を用い、同様に核分裂反応を起こさせる点では、原発と原爆とは同じだが、原発が異なるところは、つぎの3点だ。
 第1点は、濃縮度が数%程度の核素材を用いること。第2点は制御棒を使用することで、核反応の進行を緩やかにすること。第3点は核爆発反応を原子炉心臓部(圧力容器)のなかに封じ込めることで、発熱エネルギーを取り出そうとすることだ。
 原子炉(とくに圧力容器)の壁が壊われない程度に「ゆっくりと核爆発させ」ることが、原発のコツとなる。天空から降りてきた「宇宙の火」をランプのなかに閉じ込め、世を照らす光源として利用しようとしたのが原発なのだ。
 原発推進論者は、こう語ってきた。「たしかに原発というのは『アラジンの魔法のランプ』かもしれぬ。ただしアラジンのばあいと異なり、ランプは絶対に壊れないように設計されているので、安心していただきたい」と。
 2010年1月現在、世界で稼働中の原子炉は437基だったが、そのうち54基が日本国内で動いていた。日本の原子炉の平均発電容量は89.3万キロワット、平均の稼働期間は20年を超えている。

福一に蓄えられていた核物質の量

 福島第一原発(「F1、エフワン」とも呼ばれるが、以下「福一」と略す)には、運転年数が41年―33年となる老朽化した旧式の原子炉6基があった。
 2013年3月における福一の全景を描いた図1を見ていただきたい。東側の太平洋岸の南半分に、事故を起こした1-4号機が、北半分には無傷の5・6号機が並んでいる。4号機の西側には使用済み核燃料の共用プールの建物があり、その南側に広がる集中廃棄物処理施設の一角に第2セシウム吸着装置(サリー)が立っている。

福島第一原発全景図

敷地の南西部一帯には930基以上の汚染水タンクが林立しており、タンク群と1-4号機の間には、地下水の流入防止用に掘られた12本の汲みあげ井戸が並ぶラインがある。
 敷地の北西部には、除染の主力となっている多核種除去装置(アルプス)が並んでおり、その東側には、福一を全面崩壊から救った免震重要棟が立っている。
 福一の1-6号機と共用プールなどには、合計すると14,633本の核燃料集合体(以下「燃料体」と略す)があった。内訳をみると、使用済み核燃料プールに1万1825本(新燃料体496本を含む)、5-6号機に装填中が1312本、1-3号機で使用していたため溶融したものが1496本であった(表1参照)。

表1

当時4号機の原子炉は冷温停止していたため、燃料体は、すべて同じ原子炉建屋の最上階の燃料貯蔵プールに移されていた。そのため4号機の燃料プールには、貯蔵能力ぎりぎりの1533本という大量の燃料体が移され、冷却されていた。4号炉の西50メートルの建物には、「使用ずみ核燃料の共用プール」があり、6377本が冷却保存されていた。福一に存在する核燃料体総数の43.6%がここに集中していた。
 福一に存在していた14633本の燃料体の総重量はどの程度であったか。1本あたりの重量は250キログラム、うちウラニウムなど核燃料の重さを200キログラムとすると、核燃料の総重量は3700トンとなる。
 うち1-3号機の原子炉内の1496本の核燃料体のほとんどは溶融し、圧力容器の底と格納容器の底に溜まっていると考えられる。重量は300トン程度、福一に存在する核燃料全体の8%程度にあたる。
 先の高木仁三郎さんの説明を借りると、原子の火とは、宇宙から地上に降りてきた「妖龍」と形容してもよいだろう。300トンの重さの「妖龍」が溶融し、デブリ(破片)となって、1-3号機の圧力容器と格納容器の底でとぐろをまき、「宇宙の火」の残熱を発している。そのほかに再び、爆発・溶融事故がおこれば、たちまち「妖龍」と化すであろう3400トンの核燃料が、4-6号機の原子炉や核燃料貯蔵プール内で出番を待っている。

大気中に放出された放射能量

 使用前の核燃料体は、ほとんど「放射能」(放射線を発生させる能力)を持たないし、発熱もしない。核燃料体内のウラニウムを実際に核分裂させた時に、200種類ほどの放射性物質の集合体である核分裂生成物が生まれるが、その際に莫大な熱と放射線が発生する。その際に核分裂生成物(「死の灰」とも言う)が大量に生まれてくるのだが、核分裂生成物が持つ放射能は、元のウラニウムが持っていた放射能の1億倍に激増する。実際、毎時100万キロワットの電力を生み出す標準的原子炉を一年運転すれば、広島型原爆1千発を超える核分裂生成物が炉心に貯まっていく。2)なお「放射能を持つ核分裂生成物」のことを「放射性物質」あるいは「死の灰」と略称する。
 福一の核施設から大気中に、どれほどの放射能が放出されたのか。2012年5月24日に東京電力(東電)と政府が発表した90京ベクレル(900ペタベクレル。京は兆の1万倍なので、90万・兆ベクレルとなる)というのが公式見解だ。内訳をみると、1号機からは13京ベクレル、2号機からは36京、3号機からは32京、どの原子炉からか特定できない放射能が11京ベクレルで、合計すると90京ベクレルとなる。1986年4月26日のチェルノブイリの原子炉事故のばあい、放出量は520京ベクレルとされるから、その6分の1の規模となる。3)
 爆発からすでに2年半がたった。今も一定量の放射能が大気中に放出されているが、大規模な噴出は止まっている。自然減耗のテンポの遅いセシウム、ストロンチウム、トリチウムといった放射性物質が、これからの主役となるだろう。たとえばセシウム134の半減期は2.1年、セシウム137のほうの半減期は30.2年と、自然減耗のスピードは遅い。
 セシウム放出量に絞ったレポートを、2011年10月下旬に欧米の研究チームが発表した。それによると、大気中に放出された放射性セシウムの量は35.8京ベクレルであり、うち79%は海に、19%は日本列島に、2%は外国の土地に落下したと推定されている。チェルノブイリと比べると、放射性セシウムの放出量が多いのが特徴だ。大気への放出量だけで、チェルノブイリで外に出た放射性セシウム量(85京ベクレル)の42.1%の規模に達している。4)

汚染水と海への流入分も含めると

 福一の場合、溶融し、デブリ(破片)となった核燃料は1-3号機の300トンだ。原子炉のなかの放射性物質は、大気中に放出された量を上回る規模で冷却水や地下水に溶けこみ、汚染水という形で、格納容器の外へ出た。汚染水に含まれる放射能の総量を80京ベクレルと東電は推定している。少なすぎると批判する異説もあるが、本章では東電の推定値をとりたい。
 ただしその後も、溶融燃料を冷却し続けるために、汚染水は増え続けている。2013年末には、汚染水に含まれる放射能は110京ベクレルに達しており、そのうち1%が、敷地外の海洋に流出したと見積もりたい。
 以上をまとめると、200京ベクレルの放射能が1-3号機の格納容器の外に出たが、これには3つのタイプがあった。
 第1のタイプが、大気中に拡散した放射性物質で、その放射能は90京ベクレルに達した。うち7割程度は福一の東側の太平洋方面に流れたが、ほとんどは海面に降下し、日本近海のセシウム濃度を平均して2割ほど増やしつつ、太平洋を循環している。5) 他方、大気中に出た放射能のうち3割程度は西側(日本列島側)に流れた。放射性雲(プルーム)の先端は東京から静岡県、あるいは群馬県から新潟県あたりに達し、降雨や降雪時に山林などに落ちた。これら大地に降下した放射能の大半は、遅かれ早かれ雨に流され、川を経て、海に流出していくだろう。大気中に放出された放射能のうち、日本列島や外国の大地に沈着するのは10京ベクレルで、残る80京ベクレル程度は海に降下したか、時とともに山から海に流入していくものとみられる。
 第2のタイプが、福一敷地内への封じ込めに失敗し、海洋に流出した汚染水だ。2011年4月2日に2号機の取水口近くから、0.47京ベクレルの放射能を含む520トンの汚染水が流出したと東電が発表したが、6)2013年になると、日量数百トンの汚染された地下水が海へ流出していたことが露見するなど、汚染水の海洋流出は新たな高まりをみせた。本章では、福一から海洋に直接放出された汚染水の放射能を、1京ベクレルと見積もりたい。
 第3のタイプは、格納容器の外に出たが、なお福一敷地内に封じ込められている汚染水だ。貯蔵タンク・貯水槽、原子炉建屋の地下やトレンチ(地下坑道)に溜まっている汚染水、循環する冷却水などに含まれる放射能は110京ベクレルに達していたが、第2のタイプ(海洋に流出した1京ベクレルの汚染水)を差し引くと、敷地内の汚染水には109京ベクレルの放射能が含まれているとみられる。7)
 以上をまとめると、格納容器の外に出た放射能総量の200京ベクレルのうち、90京ベクレルが大気中に放出された。うち80京ベクレル程度は、海に沈下したか、山から川を介して海に流れ込んだ(あるいは流れ込む)。汚染水のなかで海に漏出した1京ベクレルを含むと、海洋に流れ込んだのは、81京ベクレルとなる。これに対して109京ベクレルが汚染水として敷地内に留まっている。結局のところ、放射能総量200京ベクレルの95%にあたる190京ベクレルが水(海への流入を含む)に吸収された。逆算すると、大地に固着した放射能は10京ベクレル程度となる。

福一の各原子炉・燃料プールの総放射能

 『国会事故調報告書』によると、溶融した1-3号機の原子炉内には、核惨事の直後に1号機に2.9万・京ベクレル、2号機と3号機には各5万・京ベクレル、合計すると12.9万・京ベクレルの総放射能があった。他方1-6号機の6つの核燃料プールと共用プールには、5880京ベクレルの放射能をもつ11825本の燃料体が冷却保存されていた(表2参照)。福一全体の総放射能が13.7万・京ベクレルだったので、その94.2%が1-3号機の原子炉内、4.3%が核燃料プール内、1.5%が5-6号機の原子炉内に存在していたことになる(表2)。
 7つの核燃料プールのなかで核分裂がもっとも活発なのは4号炉のプールだった。事故当時の崩壊熱は2.26メガワット、放射能量は2100京ベクレルに達した。つぎに活発だったのは、6377本の核燃料体を貯蔵する共用プールであって、崩壊熱は1.13メガワット、放射能量は1400京ベクレルであった(表―1・2を参照)。

表2

原子炉内の放射能のうち外に出た割合

 格納容器自体、放射能に猛烈に汚染されたため、確たることを言えないのだが、その後の自然減耗の結果、2013年央の時点では、2万・京ベクレルに減耗していたとする。そう仮定すると、うち1%にあたる200京ベクレルが外に出たことになる。いいかえると1-3号機の原子炉内で溶融した1496本の燃料体の有する放射能のうち99%にあたる1万9800京ベクレルは、なお格納容器内に残っていると推定できる。
 加えて福一には、ほとんど無傷の燃料体13137本(100本程度の破損燃料体を含む)が核燃料プールと4-6号炉の原子炉に存在している。こんご何らかの事情で爆発が起こり、これらの燃料体が核分裂=発熱、溶融、飛散することになれば、大量の放射性物質が新たに生みだされ、原子炉外に再び放出されるだろう。

ヒロシマとの比較

 百万キロワット級の今日の平均的原子炉は、毎日、広島型原爆3-4発を爆発させたのと同等のエネルギーを用いて大量の水を沸騰させ、巨大な発電用モーターを回してきた。そのため一日につき、3-4発の広島型原爆を爆発させたのと同程度の量の「死の灰」(核分裂生成物)を生み出してきた。1年間では1千発、平均稼働期間の40年の間、原子炉を動かしたとすれば、4万発の広島型原爆を爆発させたのに等しい量の「死の灰」を、1基の原子炉が量産してきたわけだ。
 広島に投下されたウラン利用の「砲身型」原爆のばあい、実際に核分裂したウラニウム235は全体の1.4%に過ぎず、残りは飛散しただけに終わった。そのため放射能の放出量は1.3京ベクレルにとどまった。長崎に投下されたプルトニウム利用の「爆縮型」原爆のばあいは、プルトニウム燃料の14%程度が核分裂反応をおこしたので、放出量は2.0京ベクレルに増えた。8)なお現代型の核兵器のばあいは、核分裂物質の真ん中に小さな空洞を設け、ブースターと呼ばれる少量の核融合物質(トリチウムのガス)を封入することで、核分裂物質の100%近い爆発を実現し、核爆弾の小型化(弾頭化)と高性能化に役立ててきた。最近北朝鮮が実験したとされる「強化型原爆」(核分裂―核融合―核分裂の3段階型爆弾)がそれだ。これと比べると広島型原爆は図体だけは大きいが、「おもちゃ」のような核爆弾だったわけだ。
 福一の1-3号機が大気中に放出した放射性物質の放射能量は90京ベクレルとされるから、広島型原爆の60個、長崎型原爆ならば39個を爆発させたに等しい量の放射能を大気中に放出したことになる。汚染水なども含めると、広島型原爆130個分の放射能を格納容器の外に放出したことになろう。
 加えて、福一が抱えている放射性物質には、核兵器爆発で生まれるタイプとは種類が異なり、長寿命の核子が多い。広島型原爆のばあい、直後の9月17日に枕崎台風が襲来し、残存放射能を瀬戸内海に流し去ったこともあり、1年後の放射線量は1千分の1程度に低下したが、福一のばあいは10分の1程度に減っただけだ。

「水のチェルノブイリ」へ

 チェルノブイリ原発には4基の原子炉があったが、1986年4月26日に最新の4号機を低出力で試験運転をしている際に爆発が起きた。4号機の原子炉内には、1万7千京ベクレルの放射能をもつ200トン程度の燃料体が存在していたのであるが、2度の爆発が起こり、原子炉の蓋を吹き飛ばしてしまった。溶融した4号機の核燃料は170-180トン程度と推定される。
 燃え続ける4号機から、1986年5月中旬まで放射性物質の放出が続いた。その間に炉内にあった放射能の3.1%にあたる520京ベクレルが放出された。9)ただし炉心の下に空気の抜ける部屋があったのが幸いして、事故の翌日には核燃料は空気で冷やされ、「象の足」のような形で固まり、冷却水を注入する必要はなくなった。加えて平坦地のために地下水脈も乏しく、地下水を深刻に汚染することもなかった。10)
 チェルノブイリのばあい、放射性物質のほとんどは大気中に出て行った。放出された放射能の70%は北側のベラルーシに降り注ぎ、この国の国土面積の25%を汚染した。11) 残る30%の放射能の大半は南側のウクライナに降り注いだが、一部はロシアからドイツ・北欧方面に流れた。12)
 事故発生の2か月後から、放射性物質の大量放出を防ぐため、4号炉を被う巨大な石棺の建設が始まった。兵士を動員した人海戦術により半年で完成させたが、高い放射線量のため、溶接やボルトによる接続も省いた応急的施設とならざるをえなかった。
 それから27年がたった。事故25周年を記念して国際原子力機関の専門家たちが編集した報告書があるが、それによると、石棺のコンクリートの壁には割れ目やすきまが多数発生し、穴の面積はあわせて1千平方メートルになっている。そこに年間2千トンの雨水が入り込み、石棺内の放射性物質と混ざり、原発付属の冷却池からプリピャチ川に漏れ出しているという。13)
 福一のばあいは、原子炉の蓋が飛ぶことがなかったので、放射性物質の大気中への放出は少なくてすんだ。しかし他面、原子炉の底が抜けるという事態が起きた。そのため冷却水を注入しつづけ、大量の汚染水を生み出し、地下水脈を汚染する結果となっている。14)
 チェルノブイリのばあい、放射性物質の大半は陸地に降下し、大地に固着したが、福一のばあいは放射性物質の有する放射能の95%は、水(うち57%は福一敷地内の汚染水、43%は海洋)に吸収され、大地への固着分は5%程度に留まる。その意味で福一の核惨事は、「水のチェルノブイリ」と特徴づけることができる。

     

2. 今後どうなるのかーー再溶融・再爆発がないばあい

「数千年続いてきたこの土地の寿命は原発が建ってからたった40数年で閉じられようとしている。・・・汚染水の処理もできないで廃炉計画を語ることは有りえない。にわかづくりのタンクに穴があく速度は想定しうる。まもなく[世界中にふたつと無い]恐ろしい光景を見ることになるだろう。・・・・人類は放射能と闘ってはいけない。一般の人は離れる以外に方法はない。除染する前に避難させなければならなかった。この責任は重大で賠償問題に発展するだろう」  (井戸川克隆 3・11当時の福島県双葉町長)15)

 原子炉建屋の爆発から2年半がたった。この間に放射性物質は自然減衰しており、今の放射性物質の中心は、半減期の長いセシウムやストロンチウム、トリチウムになった。そのためこんごは放射線量の低下は余り期待できず、高止まり状態が続くだろう。
 こんご福一を舞台にして、大規模な地震や津波、人為的事故、それに軍事攻撃などが起こらないという「幸運な状況」が続くと仮定してみよう。そのばあい問題はなくなるのだろうか。否、そのばあいでも画期的な新対策が打ち出されないかぎり、放射性物質を安全に封じ込めるシステムの方が徐々に壊れていき、放射能の外界への放出は慢性的に続くと予想される。
 福島第一原発のおひざ元の双葉町長をしていた井戸川克隆さんが、事故から2年半を経た時点で述懐された言葉の抜粋を右に掲げておいた。福一の原子炉が再溶融・再爆発するという事態が起こらなかったとしても、乱立する「粗製乱造のタンクに穴があき」、原子炉の自壊がすすむという「世界中にふたつと無い恐ろしい光景」が現われることを予見した後に、井戸川さんは、こう続けている。「放射能の有るところに住まわされている国民と、無いところに住んでいる国民とは平等とは言えない」。放射線量の高い地域に住まわされたとしても、天寿を全うする人がいるからと言って、幸福追求への機会の平等を日本国民に均しく保障しなくてもよいということにはならない。フクシマに住まわされる(住むように誘導・説得される)ことは、免疫力の弱く、疲れやすく、若死にする確率の高い「半病人」としての人生を歩むように公権力によって強制されることであり、「人命軽視」「子ども虐待」といった犯罪行為に国家が手を染めることになると、井戸川さんは指弾している。
 このような厳しい見解があることを肝に銘じつつ、現下のような政策対応が続いた場合、福一周辺は、どのような状態になっていくのかを予想してみよう。

汚染水が増える理由①――冷却の必要

 福一の敷地内にはどの程度の量の汚染水が存在するのだろうか。東電の公表データをもとに朝日新聞が試算したところ、事故から3か月がたった2011年6月下旬の時点では、原発敷地内には12万7千トン程度の汚染水があった。それから2年余り経た現在、一日400トン、月量にすると1.2万トンの割合で、汚染水は増え続け、2013年8月末の段階で、汚染水の総量は43万トンとなった。
 どのようなしかけで、汚染水は増え続けるのか。溶融した核燃料が再溶融するのを防ぐには、水をかけて、崩壊熱をとる以外の策がないことーーこれが最大の理由だ。1-3号機の溶融燃料には一日360トン、1年では13.1万トンの冷却水が注ぎ込まれている(ただし大半の冷却水は循環している)。16)

汚染水が増える理由②-地下水の流入

 原発建設前には福一の原子炉群の立つあたりには、西側の阿武隈山系を水源とする3本の川が流れ、うち1本は4号機の真下を流れていた。17)
 川が消えた今でも、敷地の地下には山側から海に向けて大量の地下水が流れている。東電の推計によると、1-4号機の周辺だけで、毎日1000トンの地下水が流れこんでいる。うち400トン程度が、溶融燃料がある1-3号機の原子炉建屋周辺に流れこみ、燃料デブリと接触するなかで、汚染水となっていく。日量400トンというから、年間では14.4万トンの地下水が汚染水に姿を変えているわけだ。この部分は、浄化装置のサリーやアルプス装置に回され、セシウムなどの除染を受けたうえで、汚染水タンクに貯蔵されている。
 残る600トンの地下水のうち、200トン程度は、破損しなかった5・6号機の方面に流れるので、この部分については放射能に汚染される心配は小さい。
 問題は、1-3号機の原子炉建屋の外側を迂回して、流れ込んでくる地下水400トンだ。日量400トンに達するこのタイプの地下水が、地区内に滞留する大量の汚染水と混じり合い、汚染水量を増やす役割を果たしてきた。実際、1-4号機のタービン建屋の地下や海沿いの埋立地に散在する各種の排水溝やトレンチ(配管・電線などを通す地下坑道)には、大量の高濃度汚染水が貯まっている。事故直後には10万トンほどあったが、2年半をへた今日でも、10万5千トンあると推定される。内訳をみると、1号機建屋に1.4万トン、2号機建屋に2.3万トン、3号機建屋に2.1万トン、4号機建屋に1.6万トン、廃棄物処理建屋に1.9万トン、タービン建屋から海岸にいたるトレンチには、1.1万トンほどが溜まっている模様だが、放射線量が高いので、詳細は不明のままだ。18) 地震翌日の3月12日夜に海水注入の非常措置がとられて以降、10万トンをはるかに超える量の海水(後には淡水も加わる)が原子炉と燃料プールに注入され、核燃料の崩壊熱をとってきたが、その時の遺産だといってよい。

汚染水の地上タンクへの貯蔵と除染の試み--アレバからサリー、そしてアルプスへ

 汚染水から放射性物質を分離し、浄化した水を冷却水として再利用しようという目的で考案されたのが「循環注水冷却」システムだった。まず2011年6月17日に、フランスのアレバ社製装置が稼働した。汚染水に薬液を注入し、超高度の放射性廃液(スラッジ)だけを沈殿・分離させるというものだったが、うまく作動しなかった。廃液といえども、表面の放射線量は毎時1シーベルトを超えており、管理困難なモノであることが分かり、60億円をかけて導入されたアレバ製の装置は、11年9月以降は休止したままだ。19)
 ついで汚染水処理システムの本命として登場したのが、11年8月16日に稼働した東芝製のセシウム吸着装置「サリー」だった(その位置は図1を参照)。直径90センチ、高さ2.3メートルの「吸着塔」のなかにセシウムを吸着する軽石状のゼオライト(沸石)をつめこみ、吸着塔のなかを落下させることで汚染水の除染を行うしくみだ。ゼオライトの吸着材は、1日あたり2-4体を取り換えていく予定だった。20)
 実際、原子炉建屋の地下室に流入する汚染水の全量(日量760トンほど)が「サリー」に導かれ、セシウムを除染してきた。除染水のうち360トンは、冷却水として原子炉に再び注入され、残る400トンは地上の貯水タンクに収容されてきた。
 「サリー」は、セシウムの除染には一定の効果はあるが、他の核種の除染はできないし、配管の複雑さから、水漏れ事故や故障が絶えないという弱点があった。21)
 そのためセシウム以外の放射性核種も除染できる装置として、敷地の北西部に突貫工事で建設され、13年9月に本格稼働したのが東芝製の「アルプス」(多核種除去設備)だった(図1参照)。アルプスでは、薬品を用いて汚染水内の泥や金属を沈殿させた後に、15の吸着塔を通して、放射性ストロンチウムなど62種類の放射性物質を取り除いていく。14年5月現在、3系列のアルプスが稼働し、36万トンの高濃度汚染水のうち、8.5万トンを処理したが、5月20日には故障のため3系列ともストップするなど、トラブルが続発している。また水分子と挙動が似ているトリチウム(三重水素)の除染はできないので、1リットルあたり数十万ベクレルのトリチウムは残らざるをえない。この汚染レベルは、海洋に放出できる限界をはるかに超えているため、たとえアルプスが順調に稼働したとしても、汚染水減らしにつながらない。@@『朝日新聞』2014年6月5日。

粗製乱造された貯蔵タンクからの水もれ

 汚染水を貯蔵すべく、タンクの大量増設が続いた。タンク容量は2012年11月には24万トンだったが、13年6月現在では38万トンに増えた(その位置は図2を参照)。
 現在のところ敷地内には、大小約930基のタンク群がひしめき合い、うち300基には、高濃度汚染水が入れられている。2014年中に貯蔵タンクの容量を70万トンに増やす方針を東電は立てているので、高さ11メートル、容量1千トンの鋼鉄製の地上タンク群が福一の敷地を埋め尽くす日が、早晩来るだろう。
 13年8月19日、護岸から500メートル離れた容量1千トンのタンクから高濃度汚染水が300トン以上も漏えいしていることが判明した(図2参照)。タンクのうち350基は、鋼板のつなぎ目を溶接せず、接合部にゴム製のパッキンを用い、ボルトで締めて接合するだけで製作された簡易(フランジ)型のタンクであったが、この種のタンクの一つからの漏えいであった。簡易型タンクを納入した企業トップ(福島県いわき市)自身が「タンクは工期が短く、金もなるべくかけずに作った。長期間耐えられる構造ではない」と証言しているように、22)5―10年しか持たないタンクが多いという。
 当初東電は、漏えい水から1リットルあたり8千万ベクレルの高レベル放射線が検出されたと発表したが、8か月後の14年4月11日、放射線量は実際には3・5倍の2・8億ベクレルに達していたと大幅に修正した。23) 300トンの漏えい水に含まれる放射線量は、84兆ベクレルに達していたことになる。東芝製サリーを用いても、この程度の除染しかできていないことが判明したわけだ。24) 図2に示したように、漏えいした汚染水の一部は側溝を通じて、海洋に流出したとみられる。

汚染水の海洋流出ーートレンチなどからの漏出

 1-4号機のタービン建屋から海にいたる地区に張り巡らされたトレンチや排水溝には、10万5千トンの高濃度汚染水が溜まっていること、この地区に流れ込む地下水が、既存の汚染水と混じり合い、汚染水量を増やしてきたことは、すでに触れた。
 タービン建屋から海側は、福一の建設時に埋め立てたところで、地質は軟弱だった。くわえてトレンチの多くは地震のために破損している。これらのことから汚染水の一部は土壌にしみこみ、大地を汚染してきた。25) はたして、2号機の海側、護岸まで40メートルの地点にある観測用井戸で、14年1月20日に採取された地下水から、1リットルあたり310万ベクレルの放射線(ベータ線を出す放射能に限定)が検出された。原発外に放出できる法定基準(30ベクレル)の10万倍強という猛烈な線量だった。また地下25メートルという深層の地下水から89ベクレルが検出され、この地区の汚染は地下深くに及んでいることも判明した。26)
 地下水の流入を放置しておくと、この地区の地下水位が上がり、汚染水が護岸を超えて海に流出するかもしれぬ。そのため汚染地下水を汲みあげ、水位を下げようとしてきたのだが、13年11月28日に東電は、汚染水貯蔵タンクが満杯に近づいたことを理由に、汲みあげを停止した。停止措置が長引けば、再び地下水位が上がり、護岸を乗り越えて、汚染水が海に流出していく可能性も否定できない。27)
 安倍晋三首相は、2013年9月の国際オリンピック委員会総会の場で、2020年のオリンピック大会を東京に誘致するため「汚染水の影響は福一港湾の0.3平方キロの中で完全にブロックされている」と大見得をきった。しかし港湾から外洋へ、セシウム137とストロンチウム90だけで、一日で600億ベクレルが出ていると気象庁気象研究所の青山道夫主任研究官が推定しているが、28)汚染水の影響が港湾外にも広がっていくのは確実だ。29)

原子炉建屋への地下水の流入をくいとめよ

 原子炉建屋やタービン建屋などの高汚染地帯に地下水の流入が続く限り、汚染水は激増し、貯蔵プール群は満杯となるだけでなく、汚染水の海洋流出も阻止できなくなる。問題を解決するには、高汚染地帯への地下水の流入自体をくい止めるしかない。そのため東電は、高台側に12本の井戸を掘り、汚染水と接触する前に地下水を汲みあげ、タンクに一時貯蔵し、汚染されていない水だけを海に流すという「地下水バイパス」計画を策定した。
 12本の汲みあげ井戸は、13年3月に完成していたが(その位置は図2を参照)、先に述べたように、5か月後の8月に汚染水貯蔵タンク群から300トンの高濃度汚染水が漏れだしたことが露見した。皮肉なことに、汚染水が漏れたタンクは、汲みあげ井戸の南西側の高台に位置していた。そのため井戸から汲みあげた地下水自体が汚染されている可能性が出てきた。

図2

 300トンの汚染水が漏れた地上タンクから北へ20メートル行った地点に観測用井戸があった。13年9月8日に採取した地下水からは、1リットルあたり4200ベクレルのトリチウムが検出されていた程度であったが、10月10日採取分からは32万ベクレル、10月17日採取分からは79万ベクレルへと上昇した。1ケ月余りで188倍も急上昇した。30)
 汲みあげ段階から地下水が汚染されているのなら、海洋への放出などはできない相談だ。焦点の12本の汲みあげ井戸から汚染水が出てくるかどうかがカギとなるが、はたして最南端の井戸で2014年4月15日に採取した地下水から、基準値(1リットルあたり1500ベクレル)を超える1600ベクレルのトリチウムが検出された。井戸水のトリチウム含有量は、その後も増え続け、同年6月末の採取分からは、1リットルあたり2300ベクレルのトリチウムが検出された。@@『赤旗』2014年4月19日・7月3日付け。「地下水バイパス」計画にも黄信号が灯ったわけだ。

2013年9月の政府の緊急対策

 深刻化する事態に直面して、安倍政権は、9月3日に「汚染水漏れ問題に関する基本方針」を決定した。①地下水バイパス計画の代案として、1-4号機の原子炉建屋の周囲に「凍土遮水壁」を築く、②故障続出のアルプス施設の代案として、「高性能多核種除去設備」を開発・設置するという方針が、あわただしく決定された。
 もともと「地下遮水壁」の構想は、事故直後の段階から、菅総理の補佐官だった馬淵澄夫・元国交大臣が、福一所長だった吉田昌郎氏と語らって推進していたものだった。横田一さんの取材によると、「完全に汚染を遮断するために、原子炉建屋を取り囲む完全閉鎖空間を作り、地下水を汲み出して乾燥状態」にする必要があるが、その課題をやりとげるには「地面に垂直に矢板の遮水壁を設置する『鉛直バリア』が最適」という結論になった。この方式を実現するには1千億円程度が必要だったが、「新たに1千億円を債務に抱え、債務超過になるのではないかとみられれば、市場の混乱を招く」と、株主総会を控えていた東電が難色を示したため、立ち消えとなった。31)
 割り安の代案として提起されたのが、1-4号機の建屋のまわりの土壌を冷却材の循環によって凍らせ、いわば「氷のダム」を築くことで、地下水の浸透を防ごうとする「凍土遮水壁」の構想だった。その位置は図2を参照していただきたい。国費320億円を投じて14年6月に建設が始まる予定だ。しかし過去にトンネル工事の出水対策などで使われた例はあるが、総延長1400メートルに達する長大な「氷の壁」を、目標とする6年の間、凍らせ続けることはできるのか、地下水位が上がり、地盤沈下や液状化を招かないかといった疑問がつきまとい、13年9月に日本陸水学会は、「より大きな事故を引き起こす可能性が高い」とする意見書を公にしている。32)

福一の将来像――「沼のチェルノブイリ」へ

 このまま推移すれば、遠からず福一の敷地は、汚染水貯蔵タンクの大群によって埋め尽くされる。福一の周辺地域を国有化し、汚染土の中間(ないし最終)貯蔵施設を集めていくしかないという政権側の「見解」が流れているが、そうなれば福一の周辺地区は、汚染水・汚染土・汚染がれきの一大集積地と化していくだろう。
 こんごも幸運に恵まれて、原子炉の崩壊を招くような地震も、津波も、人為的ミスも、軍事攻撃も起こらなかったとしよう。そのばあいでも莫大な量の放射性物質を、安全に福一内に封じ込めることができるのだろうか。おそらくできないだろうと私は判断する。理由は次の2つだ。
 第一に、東北屈指の美しい阿武隈山地が福島県を南北に貫いている。阿武隈に降った雨水は川や地下の水脈を通じて東の太平洋に流出するのが福島県の特徴だが、その水の通り道の上に福一が造成されたからだ。昔は原子炉群の周辺には3本の川が流れていたが、地下水脈に姿を変えた今日でも、一日1千トンという地下水が1-4号機の原子炉建屋の真下を流れている。しかも標高30メートル以上の断崖を20メートルほど掘り下げて、原子炉建屋を造ったので、地下水位は地表まで数メートルの所にまで上がっている。33)菅直人首相の原発事故担当補佐官だった馬淵澄夫さんの表現を使うと、「原発が稼働した1971年以降・・・、止水工事を繰り返していた・・・。原発は地下水の流れの中に立っているようなもの」なのだ。34)
 実際、地下水脈の水圧に押されて、ほっておくと原子炉建屋が浮き上がってしまうので、事故前には、建屋の周辺に地下水くみ上げ井戸(サブドレン)が60本ほど設置され、日量850―1200トンの地下水がくみ上げられてきた。しかもタービン建屋から海側に広がる一帯は埋め立てたところで、土質は軟弱で、液状化しやすいところ。汚染水の海洋への流出を防ぐと称して、沿岸部に遮水壁を築けば築くほど、地下水が滞留し、一帯は沼地となっていくだろう。35)
 第二に、増え続ける汚染水に対処するため、2日に1基に近いペースでタンクの増設を続けてきたため、遠からず、1500基以上のタンク群がひしめき合うだろう。簡易型貯蔵タンクの耐用年数は5-10年程度とされるので、こんご汚染水が漏出する事件が頻発し、汚染水の海洋流出に拍車がかかるだろう。
 東電や地方自治体任せにせず、日本国の英知を総動員しないかぎり、福一の危機は収束しない。対応方針を根本的に改めないかぎり、「水のチェルノブイリ」は、「沼のチェルノブイリ」、そして最終的には「海のチェルノブイリ」へと姿を変えながら、泥沼化していくであろう。

溶融した300トンの核燃料のゆくえ

 2800度以上の崩壊熱をだしながら、1-3号機の原子炉建屋内の圧力容器と格納容器の底で溶融している核燃料デブリをどのようにしてスリムにし、消滅させていけばよいのか。
 1979年のスリーマイル島の原発事故のばあい、事故を起こした原子炉は2号機だけに留まり、圧力容器自体も損傷しなかったので、核燃料を冷ますために放置しておくことができた。6年間の放置をへて、ある程度温度が下がった1985年に、核燃料の取り出し作業が始まった。まず事故機の圧力容器全体を水で満たしたうえで、原子炉の上部からクレーンをおろし、その先端に取り付けたクリップ状の器具で、溶融した燃料を少しずつつまみ上げ、外部に移すという作業が5年間続いた。99.5%の核燃料デブリの取り出しが確認された1990年に、作業の終了が宣言された。燃料取出しの費用だけで10億ドル(約1000億円)を要したという。
 チェルノブイリのばあい、27年たっても溶融燃料はそのまま放置され、現在は、放射能が大量に漏れることのないよう、コンクリート製石棺を覆う巨大ドームの設置工事が行われている。他方福一では、核燃料デブリは、1-3号機の圧力容器の底と格納容器の底にたまっている。安全な作業のため、まずは格納容器全体を水で満たすことが必要であるが、容器の各所に穴が開いている。容器に穿かれた穴を探し出し、水漏れを防ぐことが先決となるが、これらの作業は、猛烈な放射線の下で行わざるをえない。
 核燃料デブリが、格納容器の底を突き破り、もっと下に沈んでいる可能性も否定できない。そうするとスリーマイル島のように、つまみ上げることはできないし、バキュームで吸い上げるにしても、すさまじい放射線を浴びるだろう。東京電力は、2021年度から取り出しに着手すると言っているが、目途さえ立たないのが現状であろう。36)
 大量注水を続け、妖龍の薄皮を一枚ずつ剥ぐように、放射性物質を水のなかに溶け込ませ、沸石に吸収していくという方策は、成り立つだろうか。たしかに毎日360トンの冷却水を注ぎ込み、1日につき3キログラムのウラニウムを水に溶け込ませていけば、1年につき1トンの減量が達成される。300トンの溶融ウラニウムを消失させるまでには、冷却水を300年間注ぎこむ必要があるだろう。このような長期戦で「妖龍」を消滅させようとしたばあい、どの程度の汚染水を浄化しなくてはならないのか。廃棄される放射性物質と沸石はどれほどの分量となるのか。確かなことは誰にも分からない。
 結局、チェルノブイリでとられたのと同様の方策――コンクリート製の石棺で覆い、石棺がぼろぼろになると巨大なドームで覆うという方策をとる以外に、日本列島に人が住み続ける道はないのかもしれない。

福一事故を収束させる担い手を確保できるか

 毎日3千人の現場作業員が必要とされる状況が福一では続いている。3千人のうち9割が、協力会社や下請け業者の作業員だ。昔から危険な仕事に従事する原発の現場作業員の確保は容易ではなかったが、福一の事故収束作業の現場では、困難さは何倍にも加重されて現れる。
 原発労働に従事する人の健康を守るため、5年間で100ミリシーベルト、または1年間で20ミリシーベルトの被曝線量を浴びた作業員は、原発の仕事を続けてはならないというルールがある。被曝線量が上限に達した順に、作業員を現場から撤退させ、そのかわりに放射能を浴びていない新人を投入しなければならない。3年の経過時に100ミリシーベルトの被曝線量に達した作業員は、その後2年間は被曝する現場から撤退し、3年後から新規に被曝労働を始めねばならないという新たなルールもできた。そのため福一の事故収束作業から離れることになったベテラン作業員は、2012年3月の段階で167名を数えた。37)
 苦労してリクルートしてきた作業員により長く働いてもらうために、線量計をはずし、鉛カバーをつけるなどして、被曝線量を実際よりも低く申告することが黙認されてきたのだが、規制機関の監査をうけて、この「抜け道」も塞がれた。福一の事故関連の緊急作業に従事した作業員の甲状腺の被曝線量が上限の100ミリシーベルトを超えた人数は、2012年3月現在で178名だと東京電力は報告していたが、実際には11倍の1973名の作業員が100ミリシーベルトを越えていたことが分かり、勤務変更させられた者が続出した。38)
 人材不足に対応して、下請け企業や人材派遣企業に人材確保を任せるという事態が広がっている。たとえば2012年秋に東電が調べたところ、福一で働く一般作業員2423名のうち47.9%にあたる1160名が、人材派遣業に雇われ、偽装請負の状況で働いていたことが判明した。39)13年の4月になると、大和エンジニアリングサービス(略称「大和」)など長崎県内の3業者が、福一の復旧作業にのべ510人の労働者を違法に派遣していたとして、厚生労働省から行政処分を受けた。「大和」という企業は、元役員が暴力団と交際していたとして、09年に公共工事への参加を差し止められた「前科」をもっている。40)
 今のところ、日本の全原発が停止しているため、原発で働いていた作業員が福一に集まり、人手不足はある程度緩和されている。しかし2013年の11月8日から1年半の予定で、大破したプールから1535本の燃料集合体をつりあげ、より安全な共用プールのほうに移すクレーン作業が始まった。燃焼集合体の落下・爆発を招きかねない危険な局面に福一が入ったわけだ。41)そのうえ安倍内閣の方針に沿って、福一以外の原発が操業を再開しだすと、原発関連の作業員は、より安全な方へ流れていくし、海外で日本のメーカーが原発を建設するとなると、技術者やベテラン作業員はこの方面にも流れていくだろう。2020年の東京オリンピックが近づくと、オリンピック関連分野に流れることも考えらる。42) 事故収束作業員のリクルートが困難になると、就業希望者にはフリーパスで収束作業に従事させる傾向に拍車がかかるだろう。事実、東京電力の相沢善吾副社長は、2013年10月28日の記者会見で、作業員確保について「中長期的には非常に心配だ、・・・東京五輪の開催などで仕事が増える中で、きつい現場で働く人をいかに集めるかが、重要な問題だ」と述べ、数年後には確保が難しくなるという認識を示した。43)
 人材ひっ迫が進むと、暴力団など反社会的団体に人材調達を依存する傾向が、強まってくる。2012年5月に5-6人の組員などを作業員として違法に派遣したとして、福島県内の指定暴力団住吉会系組幹部が逮捕された。この企業は、東電から日給6-7万円の約束で、作業員派遣を請け負ったが、じっさいに末端の労務者に支払われたのは8千円程度にすぎず、差額はピンハネされ、暴力団の資金源となっていた。44)
 このような事態となると、軍事攻撃を意図した要員が作業員を装い、福一原子炉に接近することが容易となってくる。米国の強い要請を受けて、「特定秘密保護法」が2013年12月に成立したが、この法律では、「原発警備」の状況は「特別秘密」に指定されている。そのうえ原発で働く従業員にも「信頼性確認制度」(身辺調査)を早期導入する方向で政府が検討していることも明らかになった。45) 日本の建設業界、とくに原発従事者には、「過去もち」(有罪歴のある人)が相当数にのぼるという。「身辺調査」を行い、「過去もち」関係者を排除していけば、収束作業を担う人材はいっそう先細りするだろう。46)

     

3. 軍事攻撃を受けた場合、福一はどうなるか

「原発にたいする武力攻撃には軍事力では護れません。したがって、日本の海岸に並ぶ原発は、仮想敵が引き金を握った核兵器なのです・・・ひとたび原発が武力攻撃を受けたら、日本の土地は永久に人が住めない土地になる」 (小倉志郎「原発を並べて自衛戦争は出来ない」から)

 地震や津波の襲来や人為的な原発事故も起こりうるが、本章では核施設への軍事的攻撃の問題に限って考えていきたい。
 現下の世界において、破壊すると、敵に絶大な打撃を与えることができ、しかも軍事攻撃が容易なターゲット(標的)とは何であり、どこにあるのだろうか。福島第一原発は間違いなく、最有力候補のひとつであろう。
 なぜなら第1に、溶融した1-3号炉にあっても、格納容器の外に放出された放射能は1%にすぎず、放射能の99%は格納容器内に留まっており、そのうえ13137本の核燃料体が、福一の各所で冷却保存されているからだ。放射能の自然減耗を考慮しても、福一には今もなお、10万1千発の広島型原爆に相当する放射性物質(1-3号機の原子炉内には1千発相当、各所の燃料プールには10万発相当)が残っている。47)軍事攻撃が引き金となって、残された放射性物質が核分裂反応を起こし、再び爆発ないし溶融する事態となると、新たに莫大な放射能が発生するだろう。
 第2に、福一の敷地内は放射能に強く汚染されているので、軍事攻撃にたいする防衛態勢がとりにくいからである。これに加えて、事故収束作業や警備を志願する人材は、時とともに枯渇していくことが予想される。
 もし福一が攻撃されるばあい、以下の5つの施設が優先的なターゲットとなるだろう。

ターゲット(1)--1-3号機における原子炉・核燃料貯蔵プール

 原子炉の本体は、圧力容器と格納容器という強固なコンクリート壁で2重に守られているので、破壊することは容易ではないだろう。しかし日本原子力研究所の研究員だった桜井淳さんは、朝日新聞の前田史郎記者の取材に、こう答えている。「日本の原発は大型飛来物の衝突を想定して設計されていない。小型ならともかく、(北朝鮮の)テポドンの直撃を受ければ格納容器は破壊される。すくなくとも衝撃で配管類が破断、メルトダウンの恐れもある」と。48)
 医師で広島県医師会長を務める碓井静照さんも、こう説いている。「原発の場合、コンクリート製の建屋外部遮蔽壁の厚さは1-2メートルとされるが、DC10など百トンを超える大型旅客機の衝突で、少なくとも1・3メートル程度までのコンクリート壁は破壊される」、他方「日本の原子力施設で唯一航空機の墜落を想定しているのが、青森の日本原燃六ヶ所再処理工場だ。航空自衛隊の訓練地域から10キロメートルしか離れていないから、約20トンの戦闘機衝突にも耐えられるように設計されている」。49)
 そのうえ1-3号機の原子炉本体を保護する格納容器はすでに破れており、冷却装置も、これを支える外部電源装置も、にわかづくりの状態だ。上空から航空機やミサイルに直撃されると、あるいは作業員に扮した軍事要員が自爆テロを敢行すれば、無傷の原子炉と比べて、容易に破壊されるだろう。
 1-3号機の使用済み核燃料貯蔵プールのほうはどうか。原子炉建屋の最上部に位置し、格納容器の外にあるため、上空から飛行機が全速力で突入したり、燃料プールの底を自爆攻撃されると、冷却水が抜け落ち、燃料体の溶融が始まる。外部の冷却電源が攻撃されたばあいも、多少時間がかかるが、同じ結果となろう。溶融が進み、燃料棒を被う被膜から水素が発生し、水素爆発が再び誘発されると、溶融した核燃料は飛散するだろう。
 ジャーナリストのグレアム・アリソンも、2004年に書いた『核テロリズム』という本のなかで、原発内のもっとも脆弱な標的は、使用済み核燃料体の貯蔵プールだとして、こう警告していた。「使用済み核燃料貯蔵プールは、原子炉のように格納容器で守られていなくて、天井も弱い構造だ。そのため上空から減速せずに航空機でつっこまれ、冷却水が消失すると、チェルノブイリの3-4倍に達する放射能惨事がもたらされる」と。50)

 

ターゲット(2)--4号機の核燃料プール

 第2のターゲットは、4号機の使用済み核燃料貯蔵プールだろう。福一には、使用済み核燃料を貯蔵しておく核燃料プールが7か所(原子炉建屋内に付属した6つの燃料プールと、1つの共用プール)あるが、軍事攻撃をうけたばあい、もっともダメージが大きいのは、米軍が懸念していたように4号機プールだろう。12年10月現在、ここには、福一で貯蔵している核燃料体総数の12.0%にあたる1533本が冷却貯蔵され、チェルノブイリの原発事故で放出された量の10倍に達するセシウム137が貯えられている。年季の入った使用済み核燃料体には、長寿命の放射性核子が集中的に残っているので、溶融・爆発したばあい、環境にたいする悪影響は長く続くだろう。
 事故から4か月後の2011年7月に東電はプールの下階に鉄骨の支柱とコンクリートで耐震補強工事を施し、12年6月11日から15日にかけて、鉄板をかぶせる工事が行われた。51)そして2013年の11月8日から1年半の予定で、1533本の核燃料体をつりあげ、50メートル西のより安全な共用プールのほうに移すクレーン作業が始まった。4号機の燃料プールの行方に、米軍と政府・東電がいかに深刻な懸念を寄せているかを示している。52)

ターゲット(3)--核燃料貯蔵の共用プール

 4号機の西50メートルの建物には、縦29メートル、横12メートル、深さ11メートルの「使用済み核燃料の共用プール」(1997年10月に竣工)がある。収容上限は6840本であるが、すでに6377本が貯蔵され、30度の水温で冷却されている。福一に保管ないし装填・使用されている核燃料体総数の半分(50.1%)がここに集中しているわけだ。
 周辺海域を航行する漁船が短距離ミサイルを撃ちこんだり、航空機が自爆攻撃をしかけたら、あるいは作業員に扮した軍事要員が核燃料プールに自爆攻撃をしかけたとしたら、貯蔵プールの冷却装置は簡単に破壊されるだろう。発熱作用は衰えているとはいえ、長寿命の核子が大量に残っているので、溶融・爆発すれば、長期にわたって悪影響が残るだろう。

ターゲット(4)――巨大な煙突(排気筒)

 福一には巨大な排気筒(煙突)が何本か付属しているが、そのなかで1号機・2号機の山側に立つ高さ120メートルの巨大な排気筒(煙突)に深刻な懸念が寄せられている。事故直後に格納容器ベントを行ない、大量の放射能を放出したため、筒内は汚染されたままなのだが、13年9月24日の東電の発表によると、66メートルの高さの接合部分で、東西南北4方向に8カ所の亀裂が視認された。先の地震のために、この部分に損傷が生まれたのであろう。くわえて13年12月には、1号機とつながる配管という根本部分で毎時25シーベルトという野外では最高の放射能値が検出された。25シーベルトというのは、人が浴びると十数分で死ぬとされる値だ。53)
 亀裂の生じている高さ66メートルの部分を狙い撃ちすれば、排気筒を倒壊させることは難しくないだろう。そうなると大量の「死の灰」が噴出するのは明らかだ。54)

ターゲット(5)――発電力を外部に送る送電線の破壊

 霞が関に務めるキャリア官僚が、2013年秋に「日本の原発はまた必ず爆発する」と警告する匿名小説『原発ホワイトアウト』を書いて、世に衝撃を与えた。同書によれば「原発は膨大なエネルギーを発生させるので、つくられた電気を送電線で送り出さなければ、エネルギーが蓄積される・・・・・仮に、送電線に支障が来たし、発電した電気を送り出せないことになれば、原発自体を緊急停止したとしても、外部電源か非常用電源かで冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする」。したがって、原発から外部につながる送電線の鉄塔を攻撃し、倒壊させることができれば、原子炉をメルトダウンさせることは難しくないという。新潟県下の原発と外部をつなぐ送電線の鉄塔200基のうちの一つを、北朝鮮系テロリストが倒壊させ、7時間後には格納容器破壊・原発爆発に至るプロセスを述べて、この小説は結ばれている。同書によれば、原発をメルトダウンに至らせる1000本以上の送電塔が、日本では無防備のまま残されているという。55)

日本の原発は、「敵勢力」が引き金を握る核兵器となった

 東芝の原発技術者であった小倉志郎さんといえば、福一の建設に際して、原子炉系の機器のエンジニアリングに携わった人。小倉さんは、『季刊リプレーザ』という雑誌(第3号、リプレーザ社、2007年夏号)に山田太郎の筆名で「原発を並べて自衛戦争はできない」という卓抜なタイトルの論文を書き、次のように述べた。「まず、一番先に知っておいてほしいことは、原発の設計条件に、武力攻撃を受けても安全でなければならない、などということは入っていないということである。・・・現在ある商業用原発55基は、いかに発電コストを小さくできるのかという経済性を最優先で設計されているから、武力攻撃を受けた場合、どうなるかは少なくとも設計上はわかっていない・・・。肝心の原子炉が停止の後に行わねばならない冷却は、武力攻撃を受けた場合にできるのだろうか。・・・(冷却系システムの)多くは、原子炉建屋の外の補機建屋、あるいは屋外にむき出しで置かれているものも多い。屋外にあるこれらの機器は、小さな通常爆弾でほとんどが破壊されるか、機能停止に至るであろうし、補機建屋などは、危機を風雨から護る目的で、武力攻撃に対する強度などはもっていない。・・・原子炉建屋内の使用済み核燃料の貯蔵プールはどうなるであろうか。燃料プールは、原子炉建屋の最上階にある。つまり燃料プールの上には、建屋の天井があるのみである。この天井は、その上に機械を設置しないので、天井自体の重さを支える強度しかない。つまりごく小さな通常爆弾に対しても無防備と言ってよいであろう。・・・
 別のほとんど防御不可能な攻撃は、巡航ミサイルによる原発への攻撃である。これはレーダーに検知されない低空で飛んでくるもので、防ぎようがない。・・・自爆を覚悟すれば、ジェット戦闘機によっても巡航ミサイル的効果を得ることは可能である。仮想敵国の兵士が「自爆」を覚悟するほどの憎しみを日本に対して持つとすれば、こういう攻撃も可能性を否定できない。・・・最後に、次のことをおぼえておいてください。原発にたいする武力攻撃には、軍事力などでは護れないこと。したがって日本の海岸に並ぶ原発は、仮想敵(国)が引き金を握った核兵器であること。ひとたび原発が武力攻撃を受けたら、日本の土地は永久に人が住めない土地になり、再び人が住めるように戻る可能性はない」と。
 保守派論客の西尾幹二さんも、こう論じている。「・・・事故がなくても54基の原発は、バンカーバスター(地中貫通)爆弾を投下されると、原爆と同様な効果を発揮する。・・・外国から見ると、原発は日本全土に埋められた核地雷のようなもの・・・。北朝鮮が1998年に日本海に向けテポドンを発射して青森県上空を飛ばしたが、これは六ヶ所村に落とせることを実証してみせたものに外ならない」と。56)
 静岡県浜岡原発に近い湖西市長の三上 元さんも、2013年8月の世界平和市長会議総会の場で、こう説いた。「原発とはゆっくりと燃やす原爆」であり、原発を抱えているのは、「核の地雷を自国に埋め込んで、『さあ、狙ってください』と言っているのと同じ」だと。57)

     

4. 原発への軍事攻撃について海外諸国はどう考えてきたか

中東の経験

 イラクのサダム・フセイン政権は、バクダット郊外のアル・ツワイサ核施設に、フランスから輸入したオシラク原子炉を設置し、プルトニウムの濃縮を行おうとしていた。これにたいしてイスラエル空軍機が攻撃を加え、原子炉をほぼ完全に破壊する事件が、1981年6月7日におこった。当日、イスラエル空軍のF14戦闘機8機からなる2つの編隊が、アラブ諸国のレーダーに捕捉されないように、地上30メートルの低空を時速670キロの速度で飛行し、1100キロ離れたオシラク原子炉の破壊に成功した。「オシラク原子炉のドームは火の玉を吹き上げて、轟音とともに最後の大爆発を起こした。」核燃料を入れる前であったために、放射性物質の噴出は避けられたが、強固に作られたとされる原子炉の圧力容器であっても、爆撃されると簡単に壊れてしまうことが分かった瞬間であった。58)
 その後も1984年から87年にかけて、イランで建設中の原発にたいして、イラク空軍機がくりかえし攻撃を加えている。
 1991年1月の湾岸戦争の際、こんどは米軍が稼働中のイラクの原子炉を爆撃し、「原子炉に決定的損傷を与えた」と発表している。59)
 2007年9月になると、シリア東部のデルソールで建設中であった「施設」にたいして、イスラエル空軍機が爆撃し、これを破壊する事件がおこった。この施設は、シリア政府が北朝鮮の支援のもとで建設していた原子炉であり、核兵器開発が目的だったと翌年4月に米国政府は述べた。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長も、11年5月24日に「原子炉だった可能性が高い」と指摘している。60)
 2010年9月6日にはイスラエル空軍機が、再びシリアの首都ダマスカスの北東郊外に建設中の原子炉を核兵器材料(プルトニウム)の生産炉だとみなして、爆撃し破壊したし、最近では、核兵器の製造の最終段階に来たとされるイランの核施設を破壊するために、イスラエル軍が電撃攻撃を仕掛けるという情報がたびたび流れている。
 これまでに原子炉や核施設をターゲットとする軍事攻撃を行った国は、イスラエル・米国・イラクに限られるが、過去の事例をみると、高性能爆弾を使えば、原子炉本体を破壊できることは明らかだ。
 国連総会では「原発や核施設を目標とする軍事攻撃の禁止」を求める決議が、圧倒的多数で幾度も可決されてきたが、決議に反対してきた代表的な国が米国とイスラエルであった。

なぜイスラエルやヨルダンは原発の建設に積極的ではないのか

 中東諸国のなかでイスラエルとヨルダンには油田が乏しいために、両国ともエネルギーの確保に苦労してきた。とくにイスラエルは、百発以上の核兵器を保有し、地上発射の核ミサイル、核ミサイル搭載の潜水艦と爆撃機という3本柱の核運搬手段をもつ点で、米国・ロシア・中国・フランスに次ぐ「核大国」でありながら、発電用原子炉を1基も建設せずにきた。それはなぜか。原発を作れば、軍事攻撃の絶好のターゲットとなることをイスラエルの支配層が熟知しているからであろう。
 中東の親米国のヨルダンは、首都アンマン近郊に原発を建設する計画を立てていた。2014年初めに加圧水型原子炉の建設契約を結び、2020年に稼働開始という手筈であった。原子炉の受注をめぐっては三菱重工とフランスのアレバ社の連合体と、ロシア企業とが競っていた。しかるに2011年の「アラブの春」が軍事的騒乱に転換するにいたると、2012年5月13日にヨルダンの原子力委員長が「原発発注を3-4年延期したい」と言明した。隣国シリアの内戦が激化すると、爆弾テロが波及し、原発が標的となる事態を懸念したためだという。61)

なぜ沖縄には原発がないのか

 日本には地域別に10の電力会社があり、電気事業連合会を構成しているが、そのうち原子力発電を導入していないのは、沖縄電力(旧称・沖縄電力公社)だけだ。
 日本への原発導入は米国の国策だった。しかるに沖縄の地では、米国が原発導入の旗をふった形跡はない。どうして沖縄には原発が建設されなかったのか。
 天木直人さん(元レバノン大使)は、こう述べている。「米軍基地だけでも住民の反発が強いのに、これ以上住民の反発を招くことができないということだろうか。それはないだろう。政府、官僚には住民の気持ちなど一切視野にはないはずだ。とすれば唯一の理由は米国が自らの軍人や施設の安全のために原発を認めないということに違いない。・・・米国が明示的にそれを日本に命じたのか。それとも日本の政治家、官僚が米国の意向を先読みして、進んで沖縄に原発をつくる事を自粛したのか。政府や官僚は真実を知っている。それを誰かが追及し、真実が国民に開示されなければならない」と。62)
 天木さんの直観するように、軍事的な拠点の近くに原発を設けることは、「敵」の反撃の絶好の標的となり、軍事戦略上の弱点となると判断された可能性が高い。

9・11事件の衝撃

 2001年9月11日の同時多発テロ事件は、多くの謎を残す奇怪な事件であったが、民間飛行機をハイジャックし、全速力で軍事目標につっこむならば、民間機を強力な「ミサイル」に変えられることを証明した。ハイジャック犯の乗っ取った「即席ミサイル」がニューヨーク市北郊40キロのインディアンポイント原子力発電所に突っ込んでいたとしたら、世界貿易センタービル崩壊時の何百倍、何千倍もの被害が生まれたことだろう。63)
 2001年9月11日の同時多発テロ事件を契機に、①航空機を使った原子力発電施設への攻撃に警戒すること、②航空機によって原発が直撃されても、被害が拡大しないしくみを開発することを、米国の原子力規制委員会(NRC)と国際原子力機構(IAEA)が呼びかけるようになった。64)

通常兵器による攻撃、核兵器による攻撃

 平常時の数十倍から百倍の放射線量にあたる年間100ミリシーベルト以上の被曝をする地域を人が住めない「汚染地域」としよう。原子力施設が攻撃されたばあい、このような汚染面積がどれほどのテンポで縮小していくかを、攻撃手段とターゲットの種類に応じて、比較してみたのが、次の図―3である。
 この図から分かる第一点は、セシウムやトリチウム、ストロンチウムなど、原発が生み出す「死の灰」(核分裂生成物)には、核兵器の爆発で生まれる「死の灰」とは異なり、半減期が長く、長寿命の核子が多いことだ。そのため100万キロワットの原子炉が破壊されたばあい、1メガトンの核兵器を爆発させたばあいよりも、はるかに長い間、放射能汚染が続くことになる。
 第2に、原発の攻撃に核兵器を使ったばあい、放射能汚染はいわば、二乗化されて現れるので、周辺地域は、長期にわたって、深刻な放射能汚染に見舞われることだ。
 第3に、老朽化した使用済み核燃料には、長寿命の核子が集中的に残っているので、原子炉よりも放射性廃棄物貯蔵所を狙ったほうが、環境汚染の悪影響が長期にわたって持続するだろう。65)

図3

米国の原子力規制委員会の指令

 米国の原子力規制委員会(NRC)は、9・11同時多発テロ事件から半年しかたたぬ2002年2月に、原発に航空機が激突しても事故を拡大させない態勢づくりを国内の原発に義務づけた。住民がパニックとならぬよう、この指令は非公開とされたが、対策を義務付けた行政指令の条項から、「B5b」と呼ばれた。
 朝日新聞の砂押博雄記者たちは、こう説明している。「B5bに基づいて06年にまとめられた指導文書によると、米国内の原発(104基)を対象に全電源喪失事故に対応するため、持ち運びできるバッテリーや圧縮空気のボトルなどの配備・・・を義務」づけた。66)
 09年2月には米国の既存の104基の原子炉すべてで、B5bの求める航空機衝突に対処する施設が整ったことが公表された。67)

核安全保障サミットで議論されたこと

 核テロ攻撃の防止策を話し合う初の「核安全保障サミット」が、2010年4月12・13日にワシントンで開かれた。国家だけでなく、非国家の武装組織も、核物質や核爆弾の入手に全力をあげており、この事態を放置していては、彼らが小型核爆弾を製作し、あるいは核物質を原材料にした粗製核兵器を用いて、要求を貫こうとするだろう。この核テロこそが、現下の核危機のなかでも最大の緊急課題であるとオバマ政権が考えていることが浮き彫りとなった。68)
 その1年後に福島の核惨事が起こった。武装集団は核兵器を入手・製作できなくても、原発を襲い、核燃料を冷却するしくみを破壊できるならば、原発を原爆という祖型に戻すことができること、原発は武器に変えられることを彼らは知ったわけだ。
 新事態を受けて、12年3月27日・28日には53か国の首脳が集まって、韓国のソウルで第2回サミットが開かれた。原発・核施設を軍事攻撃から守り、原発を原爆という祖型に戻させないために何をなすべきかが、会議の熱いテーマとなった。原発と核施設をテロなどの軍事攻撃から守り、緊急事態への効果的な備えを充実させるよう、各国に求めた共同声明を出して、第2回サミットは終わった。69)

原発ストレステストをめぐる欧州連合の攻防

 2011年5月17日にドイツのレットゲン環境大臣が、「脱原発」のスケジュールを決めるにあたって、飛行機の墜落にたいする備えが不十分な原発を優先的に廃炉に回すという方針を明らかにした。彼はこう述べた。ドイツには17基の原子炉があるが、そのうち「4基は小型機墜落への防護基準を満たしていない。残る13基すべても、大型機墜落への備えが十分ではない」と。70)
 脱原発派の議員やオーストリア・ドイツなどは、原発のストレステストの実施にあたっては、人為的ミスや自然災害だけでなく、航空機の墜落への耐性やテロリストの軍事攻撃に見舞われた際の耐性という観点も含むように主張している。これにたいしてフランスや英国といった原発維持派は、軍事攻撃の可能性は大きくないし、いたずらに住民の不安を煽るだけだ。原発の防護基準を過度に高めようとすると、大幅なコストアップを招き、原発の経済的競争力を失わせるとして、反対している。71)

核施設への攻撃の予兆――最近の事例

 2001年9月11日の同時多発テロ事件をきっかけとして、核施設・原発にたいする軍事攻撃の懸念が盛り上がってきたが、この懸念が杞憂ではないことを示す出来事が、いくつも起こった。最近の事例を紹介するとーー
 2012年10月、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派系武装組織のヒズボラは、「我々の無人機は、イスラエルの核施設の近くに迫った」と誇らしげに発表した。核施設とは、南部の砂漠地帯にあるデモナ核兵器工場だとされている。イラン製部品を組み立てて作ったとされるヒズボラの無人機は、この時はイスラエル軍に撃墜されたが、武装集団側も無人機を手に入れ、原発・核施設にたいして攻撃を仕掛ける時代に入ったことを印象付ける事件であった。72)
 2013年1月16日に、アルジェリアの東部――サハラ砂漠にあるイナメナス・天然ガスの採掘施設に、「マグレブ諸国のアルカイダ」が軍事攻撃を行い、数百人の職員・労働者を人質にとって、立てこもった。テロ集団は、事前にガス施設の各所に20名ほどの内通者を確保しており、彼らの手引きを得て占拠は順調に進んだ。彼らはフランスのマリ共和国への軍事介入の中止・撤退を要求したが、アルジェリア軍は、軍事集団の交換条件を拒否し、鎮圧作戦を強行した。その結果、日本の大手プラントメーカー「日揮」社員をはじめ数十人が犠牲になった。73)
 先の天然ガス採掘施設からさほど遠くない西アフリカのニジェール共和国北部アガデス州のアルリット市の近郊に、フランス最大の原子力企業アレバ社が運営するウラン鉱山がある。アレバ社といえば、先に見たように、「循環注水冷却」システムの失敗作を福一に売り込んだ会社だ。先の襲撃事件から4か月後の同年5月、このウラン鉱山の入り口付近で、爆弾を積んだ自動車が爆発し、少なくとも10名が死亡した。先の事件を起こした「マグレブ諸国のアルカイダ」と同様のイスラム武装勢力に属する「覆面旅団」司令官が、犯行声明を出した。74)
 同事件から6か月後にインド南部で別の事件が起きた。インド最南端のコモリン岬から東に30キロの地に、インド政府はロシアの協力をえて、2基の原子炉を備えたグダンラムKudankulam原発(計200万キロワット)を建設し、2013年10月から電力供給を開始していたが、11月27日未明、15キロ離れた反対運動の拠点のイディンタカライ村で活動家たちが手製爆弾を組立て中に、爆発が起こり、2つの家が全壊し、1人の女性、3人の幼児を含む6人が死亡し、3人が重傷を負う事件が発生した。2013年初に反対派拠点を警察が捜索した際にも、手製爆弾が発見されたという。これまでは非暴力不服従の抵抗を重視してきた運動だっただけに、本当に原発へのテロ攻撃を策していたのかも含めて、真相解明が待たれる。75)
 もし原発や原子炉が攻撃され、爆弾で武装した戦士たちに占拠されたとすれば、社会と自然生態系への影響度は、天然ガス田やウラン鉱山にたいする攻撃の比ではない。原発の占拠に成功し、「要求を呑まないと原子炉を破壊するぞ」と脅したばあい、絶大な効果があることは容易に想像できる。76)

     

5. なぜ日本は原発への軍事攻撃を直視せずに来たのか

原発推進派の「平和ボケ」

 日本の原発業界では、長年、原発への軍事攻撃やテロは起こらないし、全電源喪失といった過酷事故は起こらないという見解を堅持してきた。
 たとえばイスラエルがイラクの研究用原子炉施設を爆撃した1981年の事件をうけ、日本の外務省が外郭団体の日本国際問題研究所に、原発への攻撃がなされたばあいの被害予測の研究を委託したことがある。1984年2月に同研究所は、「原発攻撃のシナリオ」報告書をまとめ、外務省に提出した。77)最近になってこの報告書を入手した朝日新聞の鈴木拓也記者は、つぎのような記事を書いた。報告書は①送電線や原発内の電気系統を破壊され、全電源を喪失したケース、②格納容器が大型爆弾で爆撃され、全電源や冷却機能を喪失したケース、③命中精度の高い誘導型爆弾で格納容器だけでなく原子炉自体が破壊されたケース、に分けて被害を予想した。それによると②のケースが起こっても、緊急避難を怠ったばあいは、平均3600人、最大1.8万人が急性死亡し、住めなくなる地域は平均で周囲30キロ圏内、最大で87キロ圏内となると予測した。仮に③のケースが起こったならば、「さらに過酷な事態になる恐れが大きい」と記した。ところが「反原発運動への影響を勘案」して、「この報告書は部外秘とされ、50部限定で外務省内のみに配布し、首相官邸や原子力委員会にも提出せず、原発施設の改善や警備の強化に活用されることはなかった」。78)
 1993年になると原子力安全委員会の作業部会が、長時間の全電源喪失といった事態は起こる可能性はゼロに近く、安全設計審査指針に盛り込む必要がないという見解をとりまとめていた。背景には電力業界の強力な働きかけがあったという。79)
 原子炉への爆撃対策は、その後もほとんど手つかずのままだった。先の鈴木記者はこう続けている。「警察庁は2001年の米同時多発テロを受け、国内の全原発に訓練を受けた警備隊員を配置。2年に1回程度、テログループの侵入を想定した警察と自衛隊の共同訓練を実施している。青森県六ヶ所村の再処理工場は近くに米軍三沢基地があるため、設計段階で米国の研究所に施設の鉄筋コンクリートと航空機の衝突実験を依頼し、衝撃に耐えられる強度を設定した。だが原子力安全・保安院は『原発と航空機衝突の可能性は極めて低い』として対策を講じていない。再処理工場の衝突実験もエンジンがかかった状態での墜落までは想定していない。まして爆撃やミサイル攻撃などの対策は手つかずだ」と。80)
 福島の核惨事の起こる3か月前の2010年12月には、原子力安全委員会は、9・11事件以降の原発の安全基準の引き上げという世界的動きを背景にして、原子力の防災指針に国際基準を取り入れる検討を進めようとしたが、これにたいしても電力10社でつくる電気事業連合会が、防災指針を厳しくすると、「原子力は危険だという理解を強め」「寝た子を起こす」ことになりかねないし、「交付金などの増額要求」につながる可能性があるとして、対策強化に反対する文書を作成し、原子力安全委員会に働きかけていた。81)
 事故収束の最前線に立った菅直人元首相は、こう述べている。「米国は9・11のテロ後、原発へのテロ攻撃で全電源喪失が起こる可能性を考え、対策を講じています。しかし『日本ではテロは起こらない』として全電源喪失を想定すること自体を否定し、対策も講じませんでした」と。82)

航空機突入への防御指針(B5b)の検討放棄

 日本の保安院は06年と08年に米国に職員を派遣し、NRC側からB5bに関する詳細な説明を受けたことがある。だが原発での全電源喪失やテロは「想定外」として緊急性の高い課題とは考えず、伝えてこなかったという。83)
 米国側は、B5bと同様の新しい安全基準を日本でも導入するように要請してきたが、日本の関係者は、これを無視し、福島の核惨事を招いてしまったわけだ。
 前田史郎記者(朝日新聞)は、こう書いている。福島の核惨事から半年後の11年10月に米国原子力規制委員会の元委員長が日本に来て、「もし日本がB5b型の安全強化策を事前に導入していれば、福一の運転員が直面した事態は軽減されていた。特に全電源喪失や燃料プール冷却には対処できただろう」と慨嘆した、と。84)
 日本のばあい、軍事攻撃を含めた過酷な事故が起こる可能性は事実上ゼロに近いと原発企業も日本政府も考え、過酷事故への対策をないがしろにしてきたことが、福一での事故をもたらす重大な原因となったことを『政府事故調の報告書』は率直に認めている。なぜ過酷事故がないと想定してきたのか。そう想定したほうが、①コストダウンを図り、収益を増やせるからであり、②過酷事故の可能性があると認めると、周辺住民に不安感を与え、原発反対運動の火に油を注ぎ、原発の停止を求めて住民側が提訴している裁判にも悪影響をあたえることを懸念したからだと「政府事故調」は解説している。85)日本に憲法9条があるかぎり、戦争も軍事攻撃も受けないだろうという「平和ボケ」の感覚に加えて、「住民には知らしめべからず、依らしむべし」という住民支配の日本的な体質が、今回の事故を招いた重要な要因となったのはまちがいない。

軍備を拡充すれば、福一の防衛は可能となるか

① ミサイル防衛の可能性  「戦争をできる国」にしようとすれば、原発の周辺を、ミサイル防衛網で守る必要も出てくる。ただしミサイル防衛をめぐる論争の中で、明らかになったことは、①「盾」の改善・高度化は技術的に困難であり、経済的にコストが高くなる。②「矛」の改善・高度化の方が、技術的に容易であり、コスト安だということだ。要するに攻撃側のほうが圧倒的に有利なのである。
 ミサイルで攻撃しなくても、近くの漁船から砲弾を打ち込んでもいいし、先のアルジェリアの天然ガスプラント占拠事件のように、自動車や徒歩で近づき、原発施設を占拠し、原子炉への自爆攻撃をおこなうこともできる。

② 地下深くへの移設は可能か  敵のミサイル攻撃を受けても、それなりの耐性があるのは地下式原発であろう。冷戦下では「軍事司令部と同様に、原子炉は地下深くに設置すべきだ」という意見が強まり、1960年代には、地下埋蔵型の原子炉がスウェーデンでは2基(オーゲスタ・R-1)、ノルウェー(ハルデン)、スイス(ルサン)・フランス(ショーズ)、米国(ハンボルトベイ)では各1基ずつ建設された。
 日本でも、1975年に「原子力地下立地検討会」が通産官僚主導で作られ、その研究成果が82年1月11日付けの『読売新聞』で報道されたことがある。このような背景のもとで1991年に自民党内に「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」(地下原発議連)が結成され、会長に平沼赳夫議員、事務局長に福井県選出の山本 拓議員が就任した。86)
 ただし当時は、原発の安全性を信じる人が多く、地下式にすれば原発建設コストが、普通の原発に比べて1・5倍から2倍かかるというレポートもあり、地下式原発促進論は盛り上りに欠けた。東京電力自身、「地上でうまくいっているのに地下はやめてくれ」という態度を打ち出したこともあり、「地下原発議連」はスポンサーを失い、休眠状態に入る結果となった。
 それが、福島第一原発の事故を受けて、息を吹き返した。11年5月31日に4人の首相経験者や与野党党首が顧問に名をつらねるかたちで、「地下式原発政策推進議員連盟」が再発足した。同議連の山本 拓事務局長は、メディアの取材に答えて、つぎのように述べた。「地下式原発は、事故が起きた時、放射能を容易に封じ込めることができる。ただ、当時は原発にたいする安全神話が非常に強く、議論が進まなかった。が、今回の事故で放射能漏れが起きた。では今後どうするかと考えた場合、地下につくるしかないのではないか。そこで・・・もう一度検討することになりました」と。原子力工学の専門家で大阪大学名誉教授の宮沢慶次氏も「確かに、地下原発は放射能の封じ込めが容易です。また耐震性に関しても地上よりも地下のほうが、揺れの影響が少ない。津波の心配もなく、テロへの対策もしやすい」と口をそろえた。
 しかし軍事司令部とは異なり、原発のばあいは、大量の冷却水が必要であり、沿岸部に建設することが不可欠となる。山本 拓氏は、地上式とほぼ同コストで建設ができると説くが、軍事攻撃の衝撃の強さをリアルに想定しているとは思えない。このような海沿いの地下深くに、最新型のミサイル攻撃や核攻撃を受けても安全なレベルの原発を建設しようとすれば、どれほどの巨費が必要となるかは想像を絶する。とても地上型原発の建設コストの2倍では収まらないであろう。87)

13年春の米韓合同軍事演習が腰砕けに終わった理由

 2013年3月11日から4月末までの予定で、恒例の米韓合同軍事演習(キー・リゾルブ)が実施されようとした。これにたいして北朝鮮側は、南北間の直通電話を切断し、「休戦協定は白紙に戻った」、「南北は戦時状況に入った」と宣言して、核ミサイルの応射を予告するなど、激しく反発した。休戦協定が白紙に戻り、朝鮮戦争が再開されると、まずは韓国内の21か所の原発がターゲットとなるだろう。88) 3月17日になると、北朝鮮は日本の諸施設も「決して(核先制攻撃の)例外ではない。これは脅しではない」と警告するとともに、89) 「横須賀、三沢、沖縄・・・」の米軍基地も北朝鮮軍の攻撃対象となっていると明言した。90)
 これにたいして米国のケリー国務長官が4月12日に訪韓、13日には訪中し、中国と協調しつつ、「軍事的対峙よりも政治的な話し合い」を優先する姿勢を明確にし、北朝鮮が圧力と感じるような軍事演習を縮小ないし中止する措置をとった。
 米韓側が腰砕けしたのはなぜか。その一因が福一の核危機にあったことは想像に難くないだろう。弱小国の北朝鮮を相手にするばあいでも、福一という弱点を抱えたままでは全面戦争を構えることができないことが判明したわけだ。

     

6.原発テロを克服するにはどうしたらよいのか

 アフガン・パキスタンの地で多発する自動車爆弾や自爆テロには、先端技術を駆使した強者側の攻撃にたいする弱者側の抵抗、死を賭した反撃という側面がある。暴力の応酬の起動力は強者側にあることが多いのだ。

暴力の応酬の起動力――米国による新型攻撃システムの推進

 私の前著『グローバリゼーションと戦争――宇宙と核の覇権めざすアメリカ』で解明を試みたように、米軍は、百基以上の軍事衛星編隊を3つの軌道――地上3.6万キロの静止軌道、地上2万キロのGPS衛星軌道、そして写真撮影などに有利な近軌道(地上100キロから1千キロ)で周回させ、宇宙衛星編隊を「基地の基地」として、上から地球を掌握し、米軍の全部隊をネットワークで結びつける態勢をとっている。
 ブッシュ政権期にラムズフェルド国防長官が推進した「軍事の革命」の時代に、この態勢は確立に向けて大きく前進した。地球を「惑星」として捉え、「基地の基地」たる宇宙資産を拠点に地球上の戦争を指揮し、勝利しようとするこの態勢は、「宇宙ベースのネットワーク中心型戦争」と呼ばれてきた。91)
 9・11の同時多発テロ事件を奇貨として、ブッシュ2代目政権は、反テロ地球戦争を戦うための「米軍再編」を実施した。冷戦期の遺産である宇宙利用技術、情報のネットワーク技術、精密誘導技術を活用して、新型の戦争システムを編み出そうとしたわけだ。このシステムを円滑に動かすためには、「盾」と「矛」、防衛兵器と攻撃兵器の双方が必要だった。「盾」の中軸が「ミサイル防衛」システム。「ミサイル防衛」と称してはいるが、実体は敵のミサイルを攻撃・撃墜する「ミサイル攻撃」兵器にほかならないし、「衛星攻撃」兵器に転用できる代物でもある。
 「矛」の役割を担う攻撃兵器のグレードアップ戦略の中軸になりそうなのが、「無人宇宙戦闘機」の開発(たとえばX-37B)だろう。「無人の宇宙戦闘機」とは耳慣れぬ用語だが、撃墜されないように進路や速度を自由に操れ、地上20キロ(航空機の航行上限)から100キロ(人工衛星の軌道の下限)までの空間(成層圏・中間圏)、さらには宇宙圏まで航行でき、世界のどの地点へも30分以内で到達できるという次世代ミサイルのことだ。92)「矛盾」という熟語の語源になった古代中国の武器商人と同様に、新型の「矛」と「盾」とを同時に開発し、不安を煽って、世界中に売り込もうとする「矛盾の商戦」が後に控えている。
 米国の保有する軍用機の3割余は無人機となり、米本土の安全な空軍基地内から操縦され、軍事衛星編隊によって精密誘導された無人飛翔体がアフガン・パキスタンの地上の標的にたいして、ミサイルを放ってきた。オバマ政権発足以来、非戦闘地域での無人機攻撃は240件以上発生し、「テロ組織関係者」とされる2200人以上が、裁判もなしに突然、命を奪われてきた。多数の無実の市民や子どもたちが巻き添えになったこともあり、攻撃された地域や国の民衆と政府の怒りを買ってきた。93)

「弱い環」を狙った反撃

 ところで新型戦争システムを構築する上で、「弱い環」があることも浮かび上がってきた。宇宙衛星編隊、サイバー空間、それに核施設の3つがそれだ。94)
 なかでも新型戦争システムの現下の最大の弱点は、核施設、とくに原発だというのが、軍事関係者の一致する認識となってきた。なぜならフクシマの核惨事を体験することで、妖龍を閉じ込めてきた「魔法のランプ」の簡単な壊し方が判明し、世界中に知れ渡ったからだ。米軍に抵抗する側にすれば、核施設の狙い撃ちこそが、もっとも容易で有効な反撃策だと考えるだろう。新型戦争に米国が注力すればするほど、米国とその同盟国の核施設を狙うことで、反撃しようとする動きが強まってくることは避けられない。
 米国の新型戦争システムの一翼を日本が担い、「国の内外で戦争をできる国」に日本がなっていくとすれば、パレスチナやパキスタンで起こっているのと同様の事態が、早晩、日本でも発生するだろう。この悪循環のスパイラルから脱する以外に、原発への軍事攻撃の悪夢を克服する道はない。

     

7. フクシマと憲法9条

                    

「平和的な原子と好戦的な原子とを長期間分離しておくには、私たちは、あまりにも国家感情が強すぎますし、強烈な攻撃性を克服できていません。平和目的の原子だけを抱きしめながら、戦争目的の原子を憎むことなど、できないのです。私たちが生き延びようとするならば、両方とも棄てさることを学ばねばなりません」
(ジャック=イブ・クストー、1976年5月の国連会議での演説)

             

(1)「核の時代」のフクシマ段階の意味を考える

 「宇宙の火」(核反応エネルギーの火)を司ってきた「核の天龍」は、地球生命圏に降下することで、親(原爆)と子(原発)という双頭の顔をもつ「核の妖龍」となって、地表でとぐろを巻く時代が始まった。この出生の物語をハワイ在住の画家の小田まゆみさんが、的確に描いている(図4を参照)。原発推進勢力は、頂部の双頭のところだけに視野を限定し、「平和のためのアトム」と「戦争のためのアトム」とは区別でき、分離できると宣伝してきた。
 この点に触れて、フランスの海洋学者で冒険家でもあるジャック=イブ・クストーは、1976年5月の国連の会議で次のように演説した。「平和的な原子と好戦的な原子とを長期間分離しておくには、私たちは、あまりにも国家感情が強すぎますし、強烈な攻撃性を克服できていません。平和目的の原子だけを抱きしめながら、戦争目的の原子を憎むことなど、できないのです。私たちが生き延びようとするならば、両方とも棄てさることを学ばねばなりません」と。
 資本主義の苛烈な競争の現実、および私たちの人間的発達の状況をリアルに直視するならば、クストーが説いたように、双頭の龍を2つの龍に切り裂き、分離することは不可能ではないか。私たち人類は、「宇宙の火」を制御できるだけの高みに達していないという現状を謙虚に見据えるべきではないか。95)
 「核の時代」とは、人が戦争を絶滅しないかぎり、戦争のほうが人を絶滅させる時代のことだが、このような核爆発(放射性物質の爆発的な放出を含む)を引き起こす能力を一群の核大国の独占から開放し、すべての政治・軍事勢力に平等に与えたことが、フクシマの核惨事の最大の意味であった。原発があるかぎり、どんな政治・軍事集団であれ、多少の冒険(自爆攻撃など)を覚悟しさえすれば「核爆発誘発能力」をもつという新しい時代の到来をフクシマは告げたわけだ。
 しかもポスト・フクシマは、これまでの「核抑止論」が破たんに向う時代となるだろう。「私の意思に従わないと核攻撃を加えるぞ」と核大国が、「敵」を脅しても、「敵」が国家も領土ももたぬばあい、脅しにはならない。また仮にテロ攻撃で原子炉が破壊され、原子炉から放射性物質が放出されたとしても、その影響はすぐには目にみえないので、核兵器を応射するかたちで、懲罰を与えるべきかどうか、核大国の司令官は判断に苦しむであろう。「核兵器を用いて報復するぞ」という従来型の脅し(抑止)が効き目を失う時代が始まったわけだ。

図4

(2)「国内外で戦争ができる国」を想定して原発の電力コストを再計算する

 核反応というのは、ニュートン力学の次元を超えた現象である。これまでは核反応に起因するエネルギーを、ニュートン力学次元の技術を用いて制御し、安全に利活用できるものと錯覚してきた。いまだ戦争が廃絶されていない時代に、安全よりもコストを優先して生み出されてきたのが原子力発電であった。いったん破綻すると、「カタストロフィ」(影響が時間的にも空間的にも無限定に広がり、制御不能となるタイプの破局)に直面するにもかかわらず、この破綻をあたかも「リスク」(管理が可能なタイプの危機)であるかのように「想定」し、「リスク管理」という従来型手法を用いて対処できるかのように錯覚してきた。そのツケが、フクシマの原発事故をきっかけに噴出したわけだ。
 原発は「原子力の平和利用」のモデルといわれたが、実際は「平和ボケ利用」にすぎなかった。日米安保体制のもとで日本全土を米軍の基地に開放し、米軍の宇宙規模の新型戦争計画のための「不沈空母」にしておきながら、「戦争はおこらない」という根拠のない超楽観的「想定」にもとづいて、安上がりの原発建設に走ってきた。96)「平和ボケ」のふりをしていたほうが、原発の発電コストを下げることができ、もうけを増やすことができたからだ。
 国内外で「戦争ができる国」に日本国を改造しながら、原発を再開し、原子力を基幹的エネルギー源と位置付けていくならば、原発のライフサイクルコストや過酷事故がおこったばあいの補償費用を原子力発電のコストに付け加えるのは当然として、戦時下で軍事攻撃にさらされても、原発を安全に守り抜くためのコストはいくらかかるかを計算し、国民に説明していく義務があるだろう。いまだ戦争を廃絶しえない社会が、「宇宙の火」を包摂しようとする際に生じる全コストを正直に計算すると、発電コストは数倍ないし数十倍に膨れ上がるのではないだろうか。97)

(3)福一の収束作業は東電まかせにせず、官民あげての新組織を作り、コストを度外視してとりくむ

 1私企業の東電に福一の収束作業を委ねるのには無理がある。日本内外の英知を集め、東電から切り離した新組織をつくり、コストを度外視した視点で収束作業を行うべきであろう。
 じっさい日本の未来は、福一の事故収束に努める現場の労働者の奮闘にかかっている。福一の収束作業を記録してきた布施祐二さんはこう書いている。チェルノブイリのばあい、「ソ連政府は収束作業員に対して、国家の危機を救った『英雄』として勲章を授与し、住居、年金、医療を生涯にわたって保証する制度を作った」。この先例に学び、福一の収束作業に従事する人々を経済的に支援し、「日本を救う英雄」として遇しようと。傾聴すべき提案だと考える。98)

(4)米国・中国・韓国・日本の間で、戦争放棄条約を結ぶ

 インドネシアのユドノノ大統領は、13年12月13日に日本で講演し、日本・中国・米国・韓国・ロシア・インド・オーストラリア・ニュージーランドに東南アジア諸国連合10か国を加えた18か国が互いに戦争放棄の法的義務を負う「インド・太平洋友好協力条約」の締結を呼びかけた。この構想は、アセアン(ASEAN)10か国が戦争放棄を誓約したTAC(東南アジア友好協力条約)を周辺地域に拡大したものだ。99)上の18か国は、相互に戦争放棄を誓約した「バリ宣言」をすでに11年の東アジア首脳会議で採択しているので、このバリ宣言に法的拘束力を持たすだけで、「インド・太平洋友好協力条約」が誕生することになる。この方向に東アジア諸国が歩むことができれば、福一などの原発を標的にした新型戦争を引き起こさないための重要な一歩となるだろう。

(5)63年も続く朝鮮戦争を終結させ、北朝鮮を「開放経済」に包摂していく

 63年前の1951年に、武力的手段で朝鮮半島の統一をはかろうとして、北朝鮮は朝鮮戦争を開始した。当時はソ連も中国も北朝鮮を全面支援したからだ。しかし現在は、北朝鮮側から朝鮮戦争を再開するといった行動をとる条件はない。中国もロシアも猛反対するからだ。
 何らかのはずみで、63年間も一時休戦状態が続いてきた朝鮮戦争が再開されたならば、どうなるだろうか。自衛隊陸将補であった池田整治さんが警告しているように、丸裸状況にある福島第一は絶好の標的となるのは必至だろう。100)
 いま緊急になすべきことは、北朝鮮側の長年の懇請に応えて、東アジア史上最長の戦争となってしまった朝鮮戦争を終結させることだ。そのうえで先の「インド・太平洋友好協力条約」に北朝鮮も加盟してもらい、この国を開放経済に誘導し、ベトナムと同様の道に誘っていきたい。核施設を軍事攻撃のターゲットとしない国際条約の締結も、あわせて追求すべきだろう。

(6)日本国憲法9条を守り、世界に広げていく先頭に立つ

 第1次大戦と第2次大戦の惨禍は、1945年6月に紛争の軍事的解決を禁止した国連憲章を生み出した。その2か月後に起こった広島・長崎の核惨事は、国連憲章の規定をさらに深めて、軍隊の先行的廃止までを誓約した日本国憲法9条を生み出した。とすればフクシマの核惨事は、東アジアを舞台に脱戦争の条約づくりの時代の到来を告げる鐘を打ち鳴らしたのではないだろうか。

1)高木仁三郎『チェルノブイリ原発事故 新装版』1986年、七つ森書館。
2)小出裕章「トピックス・日本」『DAYS JAPAN』 2013年10月号、8ページ。
3)『国会事故調報告書』2012年、329ページ。
4)『朝日新聞』2011年10月28日。
5)『朝日新聞』2013年10月17日。
6)『朝日新聞』2011年7月10日。
7)『朝日新聞』2011年7月10日付。
8)山田克哉『日本は原子爆弾をつくれるか』2009年、PHP新書、193ページ。
9)『日本経済新聞』2012年8月27日、『朝日新聞』2013年6月22日。
10)粟野仁雄「4号機を覆う第2石棺―ここは25年後の福島第一原発だ」『週刊金曜日』2013年8月23日、53ページ。同、13年9月13日号、8ページ。藤田祐幸「福島後をどう生きるか」『世界』2013年10月号、97ページ。
11)広河隆一『写真記録チェルノブイリ 消えた458の村』1999年、日本図書センター、246ページ。
12)高木仁三郎『チェルノブイリ原発事故 新装版』2011年(原著は1986年)、七つ森書館、ジョレス・メドヴェジェフ(吉本晋一郎訳)『チェルノブイリの遺産』1992年(原著は1990年)、みすず書房。
13)佐藤 暁「イチエフの廃炉はどうすれば可能か」『イチエフ・クライシス』(『世界・臨時増刊』)2013年12月、岩波書店、7ページ。
14)藤田祐幸「福島後をどう生きるか」『世界』2013年10月号、96-98ページ。
15)『DAYS JAPAN』 2013年9月号、14ページ。
16)海老沢 徹「福島第一原発原子炉建屋地下室に漏出する高濃度放射能汚染水の危険性」『原子力資料情報室通信』465号、2013年3月、12ページ。
17)『朝日新聞』2013年9月18日。『赤旗日曜版』2013年9月29日。
18)『朝日新聞』2013年4月7日。
19)『日本経済新聞』2011年8月17日、同11月30日。
20)『朝日新聞』2011年6月11日。
21)縄田康光「東京電力福島第一原子力発電所事故の現況」『立法と調査』329号、参議院事務局、2012年6月、10ページ。
22)『毎日新聞』2013年8月25日付け。
23)『日本経済新聞』2013年8月20日、2014年4月12日。
24)『朝日新聞』2013年8月20日夕刊。
25)松久保肇「事故処理状況(2013年4月―6月分)」『原子力資料情報室通信』471号、2013年9月1日、13ページ。
26)『日本経済新聞』2013年12月21日。『赤旗』2014年1月23日。
27)『赤旗』2013年11月30日。
28)『日本経済新聞』2013年9月24日。
29)青山道夫「人類の4度目の失敗が引き起こした地球規模の海洋汚染」『イチエフ・クライシス』(『世界・臨時増刊』)2013年12月、岩波書店、28ページ。
30)『朝日新聞』2013年9月17日。
31)横田 一「後手の対応で、リスク管理能力の欠如を国際社会に印象づけた安倍政権」『週刊金曜日』2013年9月6日、14ページ。大鹿靖明「プロメテウスの罠・汚染水止めろ」『朝日新聞』2014年1月7日―11日、1月15日。
32)『日本経済新聞』2013年12月15日。『赤旗』2014年4月19日。
33)『朝日新聞』2013年9月18日。
34)『朝日新聞』2013年9月25日。
35)『中日新聞』2013年9月12日、山崎久雄「福島原発汚染水問題の実際」『PEOPLE'S PLAN』62号、2013年12月、39ページ。
36)『日本経済新聞』2013年2月24日・26日。
37)布施祐仁「イチエフいまだ収束せずーー作業員の語る現場からの警鐘」『世界』2013年4月号、101-104ページ。 38)『赤旗』2013年7月21日。
39)『朝日新聞』2012年12月4日。
40)『朝日新聞』2013年5月11日。
41)「専門家が本気で心配する4号機の燃料棒溶融」『週刊朝日』2013年11月8日、18-2 21ページ。
42)ハッピー『福島第一原発収束作業日記――3・11からの700日間』2013年、河出書房新社、237ページ。
43)『赤旗』2013年10月30日。
44)石丸小四郎「福島第一原発事故収束作業――暴力団関連企業とその従業員の存在」『原子力資料情報通信』457号、2012年7月1日、6ページ。
45)『朝日新聞』2013年2011月8日。『赤旗』2013年11月4日・6日。
46)ハッピー、前掲書、232-233ページ。
47)1-3号機の原子炉内の放射性物質の99%が炉内にとどまり、自然減耗率を90%とする。福一に貯蔵されていた核燃料体の92%が溶融せず、その自然減耗率を33%と見て推算。
48)『朝日新聞』2011年7月9日夕刊。
49)碓井静照『放射能と子ども達』2012年、ガリバー・プロダクツ、302-306ページ。
50)Graham Allison, Nuclear Terroism,2004 (グレアム・アリソン『核テロ――今ここにある恐怖のシナリオ』2006年、日本経済新聞社、9・69ページ)。また自衛隊陸将補であった池田整治さんの著作『原発と陰謀』2011年、講談社、25-31ページも参照されたい。
51)『日本経済新聞』2012年6月9日・6月16日夕刊。
52)「専門家が本気で心配する4号機の燃料棒溶融」『週刊朝日』2013年11月8日、18-21ページ。
53)『朝日新聞』2013年12月7日。おしどりマコ「高濃度ストロンチウム流出の隠ぺい」『DAYS JAPAN』2014年3月号、18ページ。
54)『週刊金曜日』2013年11月1日、5ページ。
55)若杉 冽『原発ホワイトアウト』(2013年9月、講談社)の「終章・爆弾低気圧」(286-319ページ)を参照。
56)西尾幹二『平和主義ではない「脱原発」――現代リスク文明論』2012年、文芸春秋、198ページ。
57)『ねっとわーく京都』2013年10月号、12ページ。
58)ロジャー・クレイア(高沢市郎訳)『イラク原子炉攻撃!――イスラエル空軍秘密作戦の全貌』2007年、並木書房、247ページ。
59)西尾 漠「原子力施設は軍事攻撃の目標とならないか」、「科学」編集部編『原発と震災――この国に建てる場所はあるのか』、2011年、岩波書店、92ページ。
60)『時事ドットコム』2011年5月25日付け。
61)『朝日新聞』2012年5月15日。
621)天木直人さんの『メールマガジン』2011年6月28日付け。また『ねっとわーく京都』13年10月号、14ページの三上 元さんの発言も参照。
63)Graham Allison, Nuclear Terroism,2004(グレアム・アリソン『核テロ――今ここにある恐怖のシナリオ』2006年、日本経済新聞社、8・69ページ)。
64)ヘレン・カルディコット(岡野内 正ほか訳)『狂気の核武装大国アメリカ』2008年、集英社新書。 65)西尾 漠「原子力施設は軍事攻撃の目標とならないか」、「科学」編集部編『原発と震災――この国に建てる場所はあるのか』、2011年、岩波書店、92ページ。
66)『朝日新聞』2012年1月27日。
67)前田史郎「テロ大丈夫か⑩」『朝日新聞』2013年6月4日。
68)『朝日新聞』2010年4月13日。
69)『日本経済新聞』2012年3月28日。
70)『朝日新聞』2011年5月18日。
71)今井佐緒里「原発ストレステストをめぐる欧州連合の攻防」『世界』2012年6月号、204-213ページ。 72)『日本経済新聞』2013年11月30日。
73)『朝日新聞』2013年1月17日付け。アガデス州のウラン開発をめぐる紛争の背景については、佐久間寛「ウラン開発と福島原発事故――ニジェールを事例に」『経済』14年6月号、84-96ページ。あわせて小貫雅男・伊藤恵子『グローバル市場原理に抗する静かなるレボリューション』御茶の水書房、2013年、1-7ページも参照。
74)『朝日新聞』2013年5月24日・25日。
75)『日本経済新聞』2013年11月28日。福永正明「インドの民衆運動は原発稼働を止められるか」『世界』2012年11月号、宇野田陽子「反原発運動に暴力と入国拒否で応じたインド」『週刊金曜日』2012年10月19日、17ページ。『DAYS JAPAN』2014年5月号、12ページ。
76)「世界原発戦争とテロの交差」『SAPIO』2011年6月15日、小学館、7-13ページ。
77)『朝日新聞』2011年7月31日。
78)『朝日新聞』2012年1月27日。あわせて「世界原発戦争とテロの交差」『SAPIO』2011年6月15日号、8-9ページ。『日本経済新聞』2012年1月16日も参照。
79)『朝日新聞』2012年1月27日。
80)『朝日新聞』2012年7月31日。
81)『朝日新聞』2012年3月28日。
82)『週刊金曜日』2012年7月27日、8ページ。
83)『朝日新聞』2012年6月8日。
84)「プロメテウスの罠⑧」『朝日新聞』2013年6月2日。この点は政府事故調の『最終報告書』にも、明記されている。
85)畑村洋太郎ほか『福島原発事故はなぜ起こったのかー政府事故調核心解説』2012年、講談社、91ページ。
86)山本 拓『地下原発―共存のための選択』1992年、文明堂書店、32-36ページ。
87)「こんなご時世なのに動き出す『地下原発議連』の思惑」『週刊新潮』2011年5月19日付け、28ページ。
88)白楽晴「韓国の『2013年体制』と東アジア」『世界』2012年1月号、259ページ。
89)『赤旗』2013年3月18日。
90)『朝日新聞』2013年4月1日。
91)海上自衛隊の海将補を勤めた大熊康之氏の『軍事システムエンジニアリング――イージスからネットワーク中心の戦闘まで、いかにシステムコンセプトは創出されたか』2006年、かや書房、は、この新型戦争の画期的意味を解説している。新型戦争を伝道してきた海軍のウイリアム・オーエンス提督とアーサー・セブロウスキー提督の役割については大熊康之『戦略・ドクトリン統合防衛革命』2011年、かや書房、246-313ページ、石川潤一「ネットワーク中心の戦争を操る米軍通信衛星の全貌」『軍事研究』42-1,2007年1月も参照。
92)たとえばX-37B "Space Plane":Still No Clear Mission,at a High Price, Union of Concerned Scientists,Nov.2012.
93)『朝日新聞』2012年8月14日。
94)宇宙衛星の防護の弱点については藤岡 惇『グローバリゼーションと戦争――宇宙と核の覇権めざすアメリカ』、サイバー戦争のしくみとリスクについては、リチャード・クラークほか(北川知子ほか訳)『世界サイバー戦争――核を越える脅威』2012年、徳間書店を参照してほしい。
95)関 曠野「ヒロシマからフクシマへ」『現代思想』2011年5月号。『旧約聖書』のヨブ記38章には、こう記されている。「主は、嵐の中からヨブに答えて仰せになった。これは何者か。知識もないのに言葉を重ねて、神の経綸を暗くするとは・・・お前は一生に一度でも朝に命令し、曙に指示したことがあるのか」(パール・バック『神の火を制御せよ』2007年、径書房)。伊藤明彦『原子野の「ヨブ記」――かつて核戦争があった』1993年、径書房、262-269ページ。「ミサイル一発が命中したら原子炉は壊れる」という現実を見抜き、日本海沿いの原発の襲撃を試みる人々を描いた高村 薫『神の火』上、233ページ、下、407ページ1998年、新潮文庫。最近の注目作としては、若杉 冽『原発ホワイトアウト』(2013年9月、講談社)の「終章・爆弾低気圧」も参照のこと。
96)田中利幸「『原子力平和利用』と広島―宣伝工作のターゲットにされた被爆者たち」『世界』2011年8月号。
97)外部化されてきた原発の発電コストをすべて内部化すれば、いかに高騰するかについての1990年代の米国の到達点を紹介したものとして、藤岡 惇「アメリカ原子力発電産業の現段階」『立命館経済学』45‐6、1997年がある。
98)ハッピー、前掲書、252-253ページ。
99)『赤旗』2013年12月14日。
100)池田整治『原発と陰謀』2011年、講談社、25-31ページ。